デジタル教科書は無料?有料?国による無料配布の詳細などを詳しくご紹介

LINEPOCKETこのエントリーをはてなブックマークに追加

GIGAスクール構想に伴って1人1台の端末整備がある程度整ってきた現在、そこで使われるデジタル教科書の存在に注目が集まっています。しかし、導入するにあたってデジタル教科書が無料なのか有料なのか、その費用の詳細が気になる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、デジタル教科書の導入に必要な費用から、国から発表された「デジタル教科書の無償配布」の詳細についてまでを詳しく確認していきます。
デジタル教科書の費用面で悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

デジタル教科書とは?

デジタル教科書とは、紙の教科書の情報をそのままデジタルデータ化したものです。
デジタル教科書は当初、紙の教科書での学習が難しい生徒向けの補助的役割を果たすものとして導入され、使用にあたっては「各教科等の授業時数の2分の1に満たないこと」という基準が設けられていました。
しかし、GIGAスクール構想の下で1人1台の端末整備が進んだことによってデジタル教材全般の需要が高まり、2020年には文部科学省大臣から「授業時数の2分の1」というデジタル教科書の使用基準を見直す旨の指示がありました。その結果、現在では紙の教科書の代わりとなる新たな教材として注目を集めています。国としてはデジタル教科書を2024年に本格導入することを目指しており、現在はさまざまな実証実験が行われている段階です。
参考: デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議 | 文部科学省

↓デジタル教科書の概要については、以下の記事で詳しく解説しています。↓

デジタル教科書とは?導入する際のメリット・デメリットを解説します! – 教育機関向けGoogle for Education 情報発信サイト

GIGAスクール構想の実現に向けて、各学校で1人1台のデジタル学習端末の整備が進んできました。しかし、デジタル端末で効率的に授業を行うためには、ディスプレイ上で閲覧する「デジタル教科書」の存在が必要不可欠です。そこで今回の記事では、現在注目を集めているデジタル教科書とは何なのかという概要から、導入するメリットデメリット、閲覧するための具体的な方法に至るまでを詳しく解説していきます。

デジタル教科書の価格

デジタル教科書の価格は出版社や科目によってさまざまですが、2020年度の文部科学省の調査によれば「200円〜2,000円程度」だとされているので、単純に平均を取ると1,100円前後と考えられます。
同じく2020年度に文部科学省の発表している「(紙の)教科書1点あたりの平均定価」では、それぞれ小学校用403円、中学校用517円、高等学校用828円となっており、デジタル教科書の価格が紙の教科書と比べて決して安くないものであることがわかります。

参照: 学習者用デジタル教科書等に関する参考資料集 | 文部科学省

デジタル教科書の導入にかかる費用

文部科学省によると、2020年度に小学校で生徒1人あたりにかかった紙の教科書購入費用は、1人あたり平均4,083円とされています。先ほど挙げた小学校用1点403円という平均定価をもとに考えると、約10冊程度は購入されていることになり、デジタル教科書(1点約1,100円を想定)に換算すると、1人あたり平均11,000円前後の費用が発生することが予想されます。
義務教育である小中学校の場合、「教科書=無料」というイメージがありますが、それは国が教科書を代わりに購入しているからであり、そのためには例年460億円前後の予算が使用されています。これは昭和44年度に完成した制度で、「義務教育教科書無償給与制度」と呼ばれています。
デジタル教科書も教科書なのだから、一見すると無償給与の対象かと思われますが、現状デジタル教科書は無償給与の対象外とされており、購入に必要な費用は各自治体や教育委員会などが負担することになっています。その結果、紙の教科書とデジタル教科書を併用する場合は、先述した1人あたり平均11,000円前後という費用が別途で必要となり、全学年分や全教科分など、まとまった量を導入するには負担が大きいのが実情です。そのため、今後デジタル教科書の普及を促進するためには、国による費用補助などの対策が必要とされています。

参考:
12.教科書無償給与制度 | 文部科学省
学習者用デジタル教科書等に関する参考資料集 | 文部科学省

デジタル教科書の無料配布の開始

以上、確認してきたように、学校でデジタル教科書を導入するためには、少なくない額の費用負担が必要であり、そのことが普及にあたっての課題の1つとなっています。事実、GIGAスクール構想の推進に伴って1人1台のデジタル端末整備が大きく進んだ現状においても、デジタル教科書の普及は十分とは言えず、文部科学省の公表資料によると、2021年時点での学習者用デジタル教科書の整備率は6.2%にとどまっています。

参照: 令和2年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)P.7 | 文部科学省

この現状を踏まえ、文部科学省では2022年度から、全小中学校の一部学年を対象にデジタル教科書の無料配布が始まりました。対象となる学校や学年、負担される経費については、文部科学省の公表資料によると以下の表の通りです。

対象となる学校・学年国・公・私立の小学校5・6年生
中学校全学年
義務教育学校
中等教育学校(前期過程のみ)
特別支援学校(小学部・中学部)の相当する学年
対象の経費小学校5・6年生の1教科(英語)、中学校全学年の2教科分(英語+希望教科)の学習者用デジタル教科書(付属教材を含む)経費全額

参照: (資料2)デジタル教科書普及促進事業(概算要求)| 文部科学省

まずは対象となる全学年共通で英語が無料配布、希望する中学校には追加1教科分の配布が行われます。2024年、小学校の教科書が改訂されるタイミングに合わせてデジタル教科書を本格導入するというビジョンのもと、約50億円の予算が投入されています。

学習者用デジタル教科書普及促進事業

上述したデジタル教科書の無料配布は、学校現場でのデジタル教科書の導入促進のために文部科学省の進める「学習者用デジタル教科書普及促進事業」の1つであり、公式には「学びの保障・充実のための学習者用デジタル教科書実証事業」と呼ばれています。
「学習者用デジタル教科書普及促進事業」には、あと2つ「学習者用デジタル教科書のクラウド配信に関するフィージビリティ検証」「学習者用デジタル教科書の効果・影響等に関する実証研究」という事業も含まれています。ここでは、それら2事業について概要を確認しておきましょう。

学習者用デジタル教科書のクラウド配信に関するフィージビリティ検証

今後、英語以外の複数教科においてデジタル教科書を導入するにあたっては、スムーズな運用を行うために学校のネットワーク環境の整備が必要不可欠です。
そのため、この事業では複数のモデル学校を選定し、それらの状況を比較検証することによって、デジタル教科書の配信を進めるうえでの望ましいシステムの在り方を検証していきます。ちなみに、「フィージビリティ」という言葉は「実現可能性」「実行可能性」といった意味で使われています。

学習者用デジタル教科書の効果・影響等に関する実証研究

今後デジタル教科書をメイン教材として扱うのか、紙の教科書との併用を続けていくのかを見極めるためには、デジタル教科書の使用が生徒の学習にどれほどの効果を与えるかを検証する必要があります。
そのため、この事業ではデジタル教科書を無料配布した学校での詳細な調査、全国的なアンケートなどを行い、それによって得られたデータをもとにデジタル教科書導入の効果検証や、今後より広範囲で導入していくための課題分析を行います。

参考: 学習者用デジタル教科書普及促進事業

なぜ英語なのか?

今回のデジタル教科書無料配布に代表される「学習者用デジタル教科書普及促進事業」の意図は、あくまで2024年からのデジタル教科書本格導入を見据えた実証を行うことです。そのため、紙の教科書とデジタル教科書とで、学習成果にどれほどの違いが出るかを見定めることが重要となります。
その点、英語の場合はデジタル教科書の導入によって英語音声の再生が可能となり、紙の教科書との違いが顕著に表れやすいです。そのため、実証事業の前後における学習効果の違いが分析しやすいと判断され、今回英語が代表科目に採用されたのだと考えられます。

デジタル教科書は無償化するか

以上見てきたように、GIGAスクール構想による1人1台のデジタル端末というハード面の整備が順調に進む現在、ソフト面での整備としてデジタル教科書が注目を集めています。
2022年度から国による無料配布も始まりますが、デジタル教科書が紙の教科書と同様に義務教育での無償化対象となるかどうかは、今のところは不明です。ICT教育を推進している現在の状況を鑑みると、可能性は高いですが確実とは言えません。場合によっては、主要な教科に限っては無料とし、その他は有料で自治体の任意導入とするなどの差別化がされる可能性もあります。
文部科学省は、2024年度以降デジタル教科書を無料とするかどうかについて、2022年度中に対応を決める方針だとしています。とはいえ、デジタル教科書が無償・有償いずれになったとしても、学校現場でのICT教育において、デジタル教科書の存在が重要な要素となることは間違いありません。生徒の学習をより効率的なものとするためにも、積極的な導入を検討していきましょう。

ミカサ商事では、これまでに400校以上の学校様に Chromebook や Google Workspace for Education の導入などICT教育に関する支援をして参りました。導入後の運用や活用方法に関するご相談もお受けしておりますので、Chromebook 導入をご検討の学校様はぜひミカサ商事にお任せください。

↓Chromebook の導入や運用のご相談↓

お問い合わせはこちら