令和2年度(2020年度)までの補正予算により、GIGAスクール構想における小中学校の1人1台端末の整備が行われました。一方、補正予算の対象とならなかった高等学校での1人1台端末整備については、今後どのように対応していく必要があるのでしょうか。本記事では、最新の政府方針を踏まえて、適切な整備方法などについて解説します。
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GIGAスクール構想の概要 目的・メリット・デメリット・課題まで紹介
GIGAスクール構想は生徒1人1台のパソコン・タブレット導入や高速ネットワーク環境を整備する計画です。本記事ではGIGAスクール構想の概要から目的・メリット・デメリット・課題まで解説していきます。GIGAスクール構想について網羅的にまとめていますので、GIGAスクール構想の大枠を理解する際にぜひ参考にしてください。
政府方針で高校での1人1台端末整備が急務とされる
まずは文部科学省などの動向などについて解説していきます。
整備方法の指針を知りたい方は高校での1人1台の整備方法は?まで飛ばしてください。
デジタル庁が掲げる「デジタル社会の実現」
高等学校での1人1台の端末整備については、文部科学省だけでなくデジタル庁でも、早急に取り組む方向性が打ち出されています。
令和3年の12月24日に、「デジタル社会形成基本法(令和3年法律第 35 号)」に基づき、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」が閣議決定されました。その中で、「デジタルにより目指す社会の姿」として掲げる6つの項目の1つに、「デジタル人材の育成・確保」があり、高校での整備についての方向性が示されています。
教育現場における ICT 利活用環境の強化など GIGA スクール構想の基盤整備
高等学校段階の1人1台端末については、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の活用も含め、各都道府県における整備状況を国としてフォローアップし、必要な取組を促す。
引用-デジタル社会の実現に向けた重点計画本文|デジタル庁
文部科学省の方針でも高校での端末整備を強調
また、前述のデジタル庁による「デジタル社会の実現に向けた重点計画」の閣議決定を受けて、文部科学省も改めて教育委員会等への通知を出しています(令和3年12月27日付)。
また、高等学校については、令和4年度入学生から、新学習指導要領が年次進行で実施されます。新学習指導要領においては、情報活用能力を学習の基盤となる資質・能力の一つとして位置付けるとともに、情報科における共通必履修科目「情報Ⅰ」においても、全ての生徒がプログラミング、情報セキュリティを含むネットワーク、データベースの基礎等について学習を開始することとなっております。
これらを踏まえても、高等学校段階においても1人1台の学習者用コンピュータ端末(以下単に「端末」という。)環境を早急に整備することが必要です。
引用-GIGA スクール構想における高等学校の学習者用コンピュータ端末の整備の促進について(通知)|文部科学省
また、令和4年1月11日には、文部科学大臣とデジタル大臣共同でのメッセージが発表されています。内容としては、高校での端末整備を急務とする背景や方向性について記載されています。
高校の整備状況
続いて、これまでに公表されている高校での1人1台整備の状況についてみていきます。
令和2年度末時点では約4割の自治体が「令和3年度中に整備予定」と回答
文部科学省が行った令和2年度末の調査によると、当時の回答では、47のうち42の自治体が「1人1台整備を目標」とし、そのうち12自治体(28.6%)は「令和2年度中に完了」、5自治体(11.9%)が「令和3年度中」と回答しています。残りの約6割の自治体は検討中もしくは令和4年度以降に整備を行う見込みということですね。
あくまで当時の見込みですので、現在の状況は変化している自治体も多そうですが、まだまだ令和4年度は整備の動きが続きそうです。
引用-GIGA スクール構想における高等学校の学習者用コンピュータ等のICT 環境整備の促進について(通知)|文部科学省
高校での1人1台端末の整備方法は?
ここまで、政府方針や高校での端末整備状況について解説しました。実際に自治体や学校が整備を進める上で、どのような方向性で整備を行うべきかについて、こちらも公的資料をもとに解説していきます。
「BYOD」と「BYAD」望ましいのはどちらか
まず第一に検討するべき事項として、端末の一律貸与が難しい場合に BYOD(Bring Your Own Devices)と BYAD(Bring Your Assigned Devices)のどちらで調達を行うかということが挙げられます。
- BYAD ・・・学校が指定する条件に合った端末を、各家庭で購入して使う方法
- BYOD ・・・個人が所有する自由な端末を学校に持ち込む方法
大まかにこのような違いがありますが、高校での1人1台端末整備ではどちらが望ましいとされているのでしょうか。
結論としては、現状推奨されているのは「BYAD」です。
文部科学省およびデジタル庁の指針「個人のスマホを持ち込むのはNG」
令和4年1月に発表された文部科学大臣とデジタル大臣共同のメッセージ内で、個人のスマホを生徒用端末として利用することについて「高校生に必要とされる資質・能力を身に付けるには不十分」と言い切られています。
このことから、個人所有のスマホも選択肢となる完全な BYOD については推奨されていないことが読み取れます。
一方、多くの高校生が自身のスマートフォンを所有していることと思われますが、「情報I」の 指導内容や「大学入学共通テスト」への対応、大学進学後の学びや就職時に求められるスキルなどを考慮すると、それだけに頼る学びでは高校生に必要とされる資質・能力を身に付けるに は不十分です。
引用-高等学校における1人1台端末の環境整備について(文部科学大臣・デジタル大臣からのメッセージ)|文部科学省
ICT教育の専門団体による提言書で「貸与もしくはBYAD」「MDM」を推奨
2021年12月16日(木)に、ICT教育の専門団体から、デジタル副大臣へ「高等学校1人1台PC端末・校内通信環境整備について」の提言書が手渡しされました。
やはりここでも「高校でも1人1台の端末の整備などが急務」とされていますが、注目すべきはその方式についての提言内容です。
高等学校の端末購入においては、国からの補助金などの財政支援がないため、現在、安易に BYOD(個人端末持ち込み方式)で端末整備を前提にする自治体が多くある。しかし、BYOD は、実効性のない端末管理の蔓延、ネットワークへの不正侵入、端末の OS 保守期限切れや、ブラウザアップデートのし忘れによる致命的なセキュリティホール発生などの重大なリスクをはらんでいる。これを防ぐためには、MDM(端末管理やセキュリティ対策)管理された学校貸与方式での端末整備が必要になる。そのため、少なくとも自治体が主体として管理する BYAD(学校による端末機種・性能の完全指定方式)端末整備が必要だと考える。
引用-提言 高等学校1人1台PC端末・校内通信環境整備について
公費で購入した端末を貸与することを理想とし、それが難しくても少なくともMDMで管理できる BYAD での端末整備を行うべきと書かれています。
1人1台の端末全てを自治体や学校での負担で調達し、貸与するのは現実的に難しいケースも多いと思われます。実際には、BYAD で MDM 込みの端末を自治体や学校が指定し、各家庭が購入という形がしばらくはスタンダードになると考えられます。
提言書本文はこちらの記事↓の下部から確認できます。
「高等学校1人1台PC端末・校内通信環境整備について」~ICT教育推進4団体が小林史明デジタル副大臣に提言書を手渡し|KKS Web:教育家庭新聞ニュース|教育家庭新聞社
ICT教育推進4団体は2021年12月16日(木)、デジタル庁で小林史明デジタル副大臣に「高等学校1人1台PC端末・校内通信環境整備について」の提言書を手渡した。 ■高等学校の端末整備を文部科学省と連携して推進 提言書を […]
MDMとは? BYAD との関連性
MDM とは、複数の端末を一括管理できるシステムの総称です。
上述の提言書でも、MDM を使った管理が必要という文脈で貸与や BYAD が推奨されています。個人の自由な端末を持ち込む BYOD の方法では、MDM を紐づけて管理するということができないので、それを踏まえて貸与か BYAD での整備を行うべきだといえます。
これについては、文部科学省でも「情報セキュリティポリシーガイドライン」で MDM の利用を不可欠としているため、公費での整備ではない場合は、必然的に BYOD ではなく BYAD が最適な選択肢といえるでしょう。
MDM(Mobile Device Management)の利用
児童生徒用の1人1台端末は、MDM(Mobile Device Management)等を活用し一元的に管理を行うことが必要です。
―引用:「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」 (令和3年5月版) ハンドブック- 文部科学省
高校での 1人1台端末整備の財源は?
新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用可能?
GIGAスクール構想における小中学校への端末整備と異なり、2022年1月現在、高校での学習者用端末の1人1台整備のための補正予算は組まれていません。
そのため、実際に整備を行う際に利用できる補助金の財源がどうなるかというと、「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」を充てることが可能とされています。
令和3年(2021年)12月17日に、文部科学省は、各都道府県教育委員会、および各都道府県知事などに向けて、以下のような通知を出しています。
高等学校段階における端末の整備については、(中略)一般財源とともに、令和3年度補正予算(第1号)に計上された新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の拡充分を活用することが可能になっています。
引用-GIGA スクール構想における高等学校の学習者用コンピュータ端末 の整備の促進について(通知)
このように、「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」を、高等学校での学習者用端末の整備に使うことが可能と明言しています。
むろん、コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の使い道は、端末整備に限ったものではなく、各都道府県議会によって決定されることになります。しかし、議会の決定によっては、この臨時交付金が補助金の財源となる可能性もあるということですね。
また、続けて、このような記載があります。
1人1台端末が整備途上の場合、公費で端末を調達する場合に限らず、保護者への負担軽減策を講じる場合等においても同交付金の活用が可能となっているため~(省略)
この部分からは、例えば BYAD で保護者負担での調達を行う場合でも、その一部分を交付金で補助するという形が考えられるということが読み取れます。交付金を活用することができれば、多くの自治体や学校が懸念する事項である保護者の負担を軽減することに繋がるということが文部科学省によって強調されています。
↓GIGAスクール構想の今までの補正予算や補助金のまとめはこちら↓
【GIGAスクール構想の補助金】前倒しの影響や高校への対応についてご説明
生徒一人ひとりの個性に合わせた学習環境を整備するための政策として、GIGA構想スクールが文部科学省から打ち出されました。 本来、GIGAスクール構想は文部科学省が2019年12月に打ち出された政策で、5か年計画の構想でしたが、コロナ禍の影響もあって前倒しで進められ、補助金や補正予算にも変更がありました。本記事では、GIGAスクール構想の概要から変更前後の補助金や補正予算、さらにこれから導入が進められる高等学校への対応についてご紹介していきます。スムーズに学習環境を整えるためにも、変更点について押さえておきましょう。
高校での1人1台端末整備にはどのような端末を採用すべき?
小中学校で導入された端末は「Chromebook」が最多
OSは3種類から選択できますが、小中学校でもっとも導入されているのは、Chrome OS を搭載した「Chromebook」です。
引用-教育委員会向け GIGAスクール構想リサーチ2020 | Google
GIGAスクール構想による小中学校での学習者用端末整備では、2020年8月の段階で既に半数以上の自治体が Chrome OS を採用していることがわかります。この結果をみると、高校でも、小中学校で主流となった Chromebook を採用することの必然性は高まっていると考えられます。
さらに、高校ではCBT試験への対応やITリテラシーの獲得が求められることを踏まえると、キーボードが標準搭載されている Chromebook は最適な選択肢といえます。
Chromebook が採用される理由
Chromebook が人気の理由としては、運用・管理にかかるコストを削減できることや、シンプルで直感的な操作ができ、起動や動作が軽快な点が挙げられます。
また、多くの教育機関で利用されている Google Workspace for Education との親和性が高く、Google アカウントにログインするだけで利用できることもメリットの一つです。特に公立高校をはじめとする教育機関では、多くの生徒のアカウントを管理することになりますが、この点 Chromebook は手間や時間を大きく削減できます。
さらに、導入を後押ししているのがセキュリティ面です。Chromebook ではソフトウェアの自動アップデートや、ウイルス対策機能が標準で搭載されており、安全性の高い端末として知られています。
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GIGAスクール構想で使用する端末は何がいい?OS別の端末比較
GIGAスクール構想は、コンピューターと高速ネットワークを整備する取り組みで、多くの教育機関で早期の対応が進められてきました。実際にコンピューターを導入する際には、基本的には総務省から推奨されている Microsoft Windows、Chrome […]
BYADに最適な Chromebook パッケージ
本記事では、高校での1人1台学習者用端末整備の指針や方法について解説しました。この解説を行ったミカサ商事では、1人1台の Chromebook をBYADの形で整備されるのに最適なパッケージをご用意しております。
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