観点別学習状況の評価(観点別評価)とは?高校での導入の詳細や目的を徹底解説

LINEPOCKETこのエントリーをはてなブックマークに追加

2022年度からは高校の学習指導要領が更新され、「観点別学習状況の評価」、通称「観点別評価」が導入されます。
観点別評価は小・中学校では既に導入されて久しいものではありますが、高校担当者の方々にとっては目新しい評価基準であるため、導入にあたって不安を覚えている方も多いのではないでしょうか。
そこで今記事では、観点別評価の概要から目的、導入に伴って学習指導要領がどう変わるのかといった詳細に至るまで、高校における観点別評価の全体像を詳しく解説していきます。
観点別評価について不明点や不安がある方は、ぜひ参考にしてください。

観点別学習状況の評価(観点別評価)とは?

観点別学習状況の評価(観点別評価)とは、生徒の学習状況を各教科ごとに設定した観点別に評価して、その実現状況を分析的に捉えることを目指した評価方法です。
小・中学校での義務教育過程ではすでに導入されている評価方法ですが、2022年度からは新しく高校の学習指導要領でも導入されます。そのため、観点別評価に合わせて高校の評価体制も新しく変えていくことが求められます。

なぜ変えるのか?観点別評価の主旨・目的は?

従来の評価体制をなぜ観点別評価に変えるのかというと、それによって学習評価の改善と、それに伴った教育活動の質の向上が意図されているからです。
文部科学省の発表資料によると、これまでの学習評価体制では、学校や教員の状況によって以下の課題が指摘されています。

・ 学期末や学年末などの事後での評価に終始してしまうことが多く,評価の結果が児童生徒の具体的な学習改善につながっていない,
・ 現行の「関心・意欲・態度」の観点について,挙手の回数や毎時間ノートをとっているかなど,性格や行動面の傾向が一時的に表出された場面を捉える評価であるような誤解が払拭しきれていない,
・ 教師によって評価の方針が異なり,学習改善につなげにくい,
・ 教師が評価のための「記録」に労力を割かれて,指導に注力できない,
・ 相当な労力をかけて記述した指導要録が,次の学年や学校段階において十分に活用されていない,

引用:小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)|文部科学省

これらを敢えて端的にまとめると、従来の評価体制では生徒たちの学習状況を表面的に点数化することに終始してしまっていて、学習や指導の改善につながっていなかったということになります。
生徒側が通知表に記載される評定に一喜一憂し、教師側が評定を出すことで満足してしまっているだけでは、学習や指導の改善につながりません。たとえるならそれは、健康診断と健康維持の関係に似ています。健康診断で大切なのは、数値の良し悪し自体ではなく、それを踏まえてどう生活を改善させていくかです。
そして、学習評価をよりわかりやすく、今後の改善につながりやすいものにしていくため、以下の3つの方針を基本として生まれたのが、今回導入される観点別評価なのです。

① 児童生徒の学習改善につながるものにしていくこと、
② 教師の指導改善につながるものにしていくこと、
③ これまで慣行として行われてきたことでも、必要性・妥当性が認められないものは見直していくこと、

引用:児童生徒の学習評価の在り方について(報告) |中央教育審議会

学習環境・指導環境のPDCA化

観点別評価の導入は、教師側と生徒側双方のPDCAサイクルを回すためという見方もできます。
PDCAサイクルとは「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(測定・評価)」「Action(対策・改善)」の頭文字を取った言葉です。これらを一連のサイクルとしてこなすことで、各々の目指すマネジメント品質を高めることが期待されます。今回の文脈で言うと、生徒にとってのマネジメントは「学習」であり、教師の場合は「指導」にあたります。
従来の評価体制では、生徒は評定をもとに対策・改善へとつなげることができなかったため、PDCAサイクルが以下のように途中でストップしてしまっていたと考えられます。

Plan:学習計画

Do:学習活動

Check:評価

しかし、観点別評価が導入されると、生徒の学習改善につながりやすい体制が整い、改善策を検討するActionが生まれ、PDCAサイクルが回り出すことが期待されます。

Plan:学習計画

Do:学習活動

Check:評価

Action:改善策検討

Actionの次は新たなPlanへとサイクルが連面とつながっていくため、生徒の学習計画が学期ごとなどの細切れのものでなく、より大きな視野に立ったものになることが期待されます。
また、PDCAサイクルは教師側でも回っていきます。そのため、観点別評価が導入されることで、生徒と教師それぞれのPDCAサイクルが連動し、双方に良い影響を与え合っていくでしょう。

Plan:学習計画(指導計画)

Do:学習活動(指導活動)

Check:評価

Action:改善策検討

高校の学習指導要領はどう変わる?

観点別評価が導入されることによって、新しい学習指導要領では以下の3つが目標として定められ、これらに基づいて目標準拠評価(絶対評価)で学習状況を評価します。

  1. 知識及び技能
  2. 思考力、判断力、表現力等
  3. 学びに向かう力、人間性等

ただし、このうち3番目に含まれる「人間性」は感性や思いやりを表していて、観点別の評価・評定には示すのが難しいポイントです。そのため、人間性については別途教師の個人内評価を行うこととし、それ以外で評定を付けるための観点が3つ設定されました。従来の4観点と合わせてまとめると、以下表のようになります。

従来の観点(旧観点)観点別評価の観点(新観点)
知識・理解知識・技能
技能
思考・判断・表現思考・判断・表現
関心・意欲・態度主体的に学習に取り組む態度

表の通り、新観点の「知識・技能」は旧観点の「知識・理解」「技能」の2観点を合わせたものに相当します。
それでは、3つの新観点について詳しく内容を確認していきましょう。

新しい観点①:「知識・技能」

「知識・技能」では、各教科の学習で身に付いた具体的な知識と技能を評価します。従来「知識・理解」「技能」という観点で特に重要視されていた部分です。
具体的な評価方法としては従来通りのペーパーテストやそれに準ずるCBT(デジタル端末上で行うテスト)が挙げられます。評価する際は、生徒が事実知識のみならず、概念的な理解ができているか、知識や技能を実際に表現したり用いたりできるか等についても確認することが求められます。

新しい観点②:「思考・判断・表現」

「思考・判断・表現」では、各教科の学習で得た知識や技能を使って、実際に問題を解決するための思考力、判断力、そしてその表現力が適切に身に付いているかを評価します。
ペーパーテストやCBTだけでは測定することが難しいので、レポート発表やグループワーク、作品制作や表現活動などの多様な活動と、そのポートフォリオを評価対象に取り入れる必要があります。

新しい観点③:「主体的に学習に取り組む態度」

「主体的に学習に取り組む態度」では、「知識・技能」と「思考・判断・表現」を身に付けるため、自らでどのように学習状況を把握・調整し、どれだけ粘り強く学ぼうとしたかという主体的な態度を評価します。先述のように、教師による個人内評価と合わせて「学びに向かう力、人間性等」を測る観点になっています。
具体的な評価方法としては、授業中の発言や行動、生徒の自己評価や相互評価が挙げられます。3つの観点の中で最も客観的に判断しにくいものなので、公正な評価を下すためには特に注意が必要になってくるでしょう。

参考:新学習指導要領に対応した学習評価(高等学校編)|独立行政法人教職員支援機構

観点別評価の実施方法

観点別評価の具体的な実施方法は次の通りです。まず教科ごとに3観点をA・B・Cの3段階で評価します。続いて、それをもとに1~5の評定を付けます。
このとき、評価基準(A・B・C)と評定基準(1~5)いずれの場合も、具体的な線引きは政府で定めておらず、実施する学校が独自に決めて良いことになっています。とはいえ、3観点の評価と評定との対応関係は概ね以下のようになるでしょう。

「知識・技能」の評価「思考・判断・表現」の評価「主体的に学習に取り組む態度」の評価評定
AAA5
BBB3
CCC1

ただし、たとえば各評価が「A・B・B」となっていた場合に4と3のいずれにするか、「B・B・C」となっていた場合に3と2のいずれにするかといった裁量は、学校ごと、教科ごとに変わってくるでしょう。しかし、ここで重要なのは評価・評定の基準が客観的かつ公正なものであることです。
評価・評定の具体的な基準が教師にしかわからず、生徒や保護者にとってブラックボックスとしたものになってしまっては信頼を失いかねません。また、教科担当者ごとに評価・評定基準が違うなどといった不公平な事態に陥ることも防がなければなりません。高校における評価・評定は、義務教育の頃以上に生徒の進路、および人生に大きな影響を及ぼします。
新学習指導要領を導入するにあたっては、各教科ごとに評価・評定基準を明確にし、しっかり話し合いを踏まえたうえで対応していくことが重要です。

高校での観点別評価導入は2022年度から。早めの対策が求められる

観点別評価は、2022年度から高校で導入されます。それに伴い学習指導要領自体も変更になるため、何も対策しないままでは大きな混乱が生まれてしまいかねません。
学習において中身が重要なのは間違いありませんが、評価や評定はそれを担保するものです。そのため、客観的かつ公正な基準で行わなければ、生徒たちの学習効果を適切に高めることはできません。
文中に引用した観点別評価の基本方針の1つに「これまで慣行として行われてきたことでも、必要性・妥当性が認められないものは見直していくこと」というものがありましたが、このタイミングは学校現場にとっても、従来の内規などを抜本的に見直すチャンスです。
2022年度の導入に向けて早めの対策を行い、生徒と教師双方が納得できる、客観的かつ公正な評価体制を構築できるようにしましょう。

●月2回の活用講座や Facebook グループでの情報交換を開催!
●コミュニティに参加希望の方は Facebook グループにてご参加ください。
※現在、承認制の参加体系となっております。「参加」をクリックしていただきますと、確認後に承認させていただきます。

▼G-Apps.jp Community に参加する(無料)▼
https://www.facebook.com/groups/586849022687922