GIGAスクール構想の推進に伴い、多くの学校で1人1台の端末整備が整ってきた今、新しい授業形式として「ハイブリッド型授業」が大きく注目されています。
今記事では、ハイブリッド型授業の概要から、具体的なメリット・デメリット、実施する方法や注意点について詳しく説明していきます。
ハイブリッド型授業の実施を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
ハイブリッド型授業とは?
ハイブリッド型授業とは、教室で教師と生徒が対面して行う従来型の授業と、自宅など任意の場所から受けられるオンライン授業を組み合わせた授業形式のことです。
コロナ禍の感染対策としてオンライン授業が一般的になった今、学校教育における新しい授業のかたちとして大きな注目を集めています。
ハイブリッド型授業は、その実施方法によって「ブレンド型」と「ハイフレックス型」に分けられます。
ブレンド型授業
ブレンド型授業とは、教室での対面授業・オンライン授業・事前に録画した授業動画、これらを組み合わせて行う授業のことです。
たとえば、ある回は対面授業で、またある回はオンライン授業でといったように実施回ごとに授業形式を変えたり、録画した授業動画をアーカイブとして残しておいて、復習用や学習支援用として活用したりといった使い方ができます。
ハイフレックス型授業
ハイフレックス型授業とは、同じ内容の授業を対面かオンラインか、好きな方で受けることができる授業のことです。
教室に行かなくてもオンラインで同水準の授業を受けることができるため、体調不良などで突発的に参加できなくなったり、不登校などで教室に来ること自体が難しい場合にも対応することができます。
ハイブリッド型授業のメリット
ハイブリッド型授業は、対面授業とオンライン授業双方の良い部分を受け継いでいるため、導入することで多くのメリットを得られます。ここでは、そのうちの代表的な4つのメリットについて確認していきましょう。
メリット①:家庭の事情に応じて授業形式を選べる
ハイブリッド型授業は、対面とオンラインのうち好きな方で授業を受けられるので、生徒の家庭事情に応じて授業形式を選ぶことができます。
たとえば大雨などに見舞われた際、学校から近い生徒ならば普段通り登校できても、家が遠い場合は物理的に登校が難しくなることが考えられます。そのような場合、登校できる生徒は対面で、難しい場合はオンラインでとハイフレックスに授業を行えば、生徒たちの学習機会を一律にすることができるでしょう。
それ以外にも、「家庭内にウイルスの感染者が出た」「急病人が出て生徒が家を空けられない」など、さまざまな場面でハイブリッド型授業は生徒の学習機会維持に大きく役立つことが期待されます。
メリット②:ウイルスへの感染リスクを減らせる
ここまででも何度か挙げていますが、ウイルスへの感染リスクを減らせるという点は、ハイブリッド型授業のメリットとして非常に大きなものです。
より具体的に言うと、まずブレンド型の場合は、対面授業のみを行うよりも登校する生徒の数を少なくできるので、生徒同士の接触が減り、そのぶんウイルスへの感染リスクを減らすことができます。
そしてハイフレックス型の場合は、たとえばクラスの3分の2は対面、3分の1はオンラインなどとすることで、教室の密集度を減らして感染対策を取ることができます。
普段からハイブリッド型授業を行っていれば、感染が拡大して学級閉鎖になった場合でも学習を止めずに済みます。ウィズコロナ時代に教育の質を担保するためにも、ハイブリッド型授業は非常に有益だと言えるでしょう。
メリット③:学習効果の向上が期待できる
ハイブリッド型授業では、授業を受ける場所を任意に選べるようになるだけでなく、対面とオンラインそれぞれの特徴が合わさることにより、学習効果の向上も期待できます。
たとえば、知識を教え込むことを主眼として、教師から生徒へ一方向に情報を伝える授業形式であれば、オンライン授業でも対面と同じかそれ以上の効果を期待できます。また、1回の授業では理解が不十分な場合も、録画した授業を見直すことで復習することが可能です。
その一方、生徒同士でディスカッションをしたり、複数人で協力して何かを制作したりする授業の場合は、依然として対面授業の方が適しています。
対面だけ、オンラインだけといった授業形式の場合、これらのメリットのいずれかを取りこぼすことになってしまいます。しかし、双方を組み合わせたハイブリッド型授業であれば、授業スタイルや学習内容に応じて適切な授業形式を選ぶことができるようになります。
メリット④:不登校生徒への学習支援になる
ハイブリッド型授業は、教室内と同等の学習効果を教室外に届けることができるので、不登校生徒に対する学習支援としても非常に有用です。
たとえば、ハイフレックス型の授業で教室にいる生徒たちと同じ授業を共有すれば、再登校した際の雰囲気が掴めるでしょうし、オンラインでの生徒同士の交流にも繋がります。また、ブレンド型の授業で過去の授業動画などを配信すれば、遅れてしまった学習を取り戻すことができるでしょう。それらに加えて、教師側で不登校生徒の学習状況や到達度が掴めるという点も大きなメリットです。
↓不登校生徒に対する学習支援については、こちらの記事でさらに詳しく解説しています↓
GIGAスクール構想下の不登校支援|学びを止めないためのICT活用術 – 教育機関向けGoogle for Education 情報発信サイト
何らかのやむをえない事情によって登校することができない「不登校」の生徒が、年々増え続けています。文部科学省推進のGIGAスクール構想が目指す「1人1台のICT端末」というお題目には、もちろん不登校の生徒たちも含まれます。そのため、ICT教育において不登校生徒たちへの学習支援をどのように行うかが、今後の鍵になってきます。 本記事では、不登校の生徒たちの学びを止めないためにICTがどのように活用できるか、詳しく確認していきます。
ハイブリッド型授業のデメリット
ハイブリッド型授業はメリットの多い授業形式ですが、そこにはデメリットもいくつか存在します。
ハイブリッド型授業を実施する際は、それらをしっかり認識し、少しでも影響が少なくなるように課題解決をしていくことが重要です。
ここでは、代表的なデメリットを3点取り上げます。
デメリット①:配信設備や電気代が家庭負担になる
オンラインで授業配信を行う際、Wi-Fi などの配信設備や通信に伴う電気代は生徒の家庭負担になります。家庭によっては、通信料が大きな負担になることも考えられるので、十分な配慮が求められます。
また、通信設備の水準は家庭によってさまざまです。そのため、通信速度が低い場合には「動画が途中で止まる」「音声がよく聞こえない」といったトラブルが発生することも考えられます。
デメリット②:対面でのコミュニケーションが減少する
対面かオンラインかを任意に選べるようにすると、生徒によってはオンラインで受ける回数が多くなり、対面でのコミュニケーションが減少するというデメリットが考えられます。
オンラインは対面と比べて生徒の様子がわかりにくく、何か悩みがあった場合も察知するのが難しくなってしまいます。
オンラインでの参加が増えてしまいがちな生徒の場合は、より意識的に注意を向けるなどして、コミュニケーションの減少分をカバーするように心がけましょう。
デメリット③:対面とオンラインで生徒間にギャップが生まれる可能性
ある生徒たちは対面が中心、ある生徒たちはオンラインが中心といったように住み分けができてしまうと、対面組とオンライン組とで生徒間にギャップが生まれてしまう可能性があります。特に、家庭の事情などで長期間オンライン参加が増えてしまった生徒は、そこから対面に参加するのが難しくなってしまうことも考えられます。
ハイブリッド型授業を行う際は、対面とオンラインで生徒間にギャップが生まれないよう、日によって対面組とオンライン組を入れ替えたり、オンライン上でディスカッションを実施して、双方がコミュニケーションできる機会を設けたりといった工夫をするようにしましょう。
ハイブリッド型授業の具体的なやり方、注意点
ハイブリッド型授業は、対面とオンライン両方の授業方法を取り入れているため、実施する際はやり方に注意が必要です。
ここでは、特に注意したいポイントを3つ確認していきましょう。
板書内容の届け方
ハイブリッド(ハイフレックス)型授業で、教室で行っている授業をオンラインでも同時配信する場合は、板書がオンライン参加者にも見やすいように工夫することが大切です。
具体的には、まず文字の大きさに注意します。画面上で見やすいように普段よりも大きく板書することを意識しましょう。
また、文字と文字の間は少し空けるようにしましょう。生徒の通信環境によっては、画質が乱れてしまうこともあるので、少し解像度が低くても文字が潰れない程度の空間を空けると見やすくなります。
そして、画角などにもよりますが、黒板の端部分は画面上で切れてしまうことが多いので、なるべく端には板書しないようにしましょう。
なお、板書をせずに電子黒板を利用する場合は、オンライン会議アプリの画面共有機能を使って共有すればOKです。
教室の音声の届け方
授業を行う教員の声は、教員用の端末に付属しているマイクで拾います。
特に、対面参加者とオンライン参加者の両方に教員の声を届ける必要があるハイフレックス型の場合は、双方にしっかり声が届き、かつ音割れが起きないように声量とマイクの設定を調整しましょう。
また、対面参加者の発言をオンライン参加者に届けたい場合は、教師がそれを復唱するか、参加者の端末マイクを有効にして発言してもらいましょう。
オンライン参加者の声の届け方
ハイフレックス型の場合、オンライン参加者の発言を教室に届けることも重要です。
対面で参加している生徒は端末を使用していないこともあるので、オンライン参加者の声を伝えるには、教員用の端末を教室のスピーカーに繋ぐか、マイクをもう1つ用意し、対面参加者に向けて設置することで対応しましょう。簡単な発言の場合は、教員が復唱代弁することで伝えてもOKです。
ハイブリッド型授業を活用して「学びを止めない」授業を実現する
ハイブリッド型授業は、教室での対面授業とリモートでのオンライン授業を組み合わせた新しい授業形式です。
対面とオンライン双方のメリットを併せ持つため、実施することで学習効果を高めたり、さまざまな事情で登校が難しい生徒への学習支援として活用できます。
今後、緊急事態宣言が出されたり学級閉鎖が起きたりした場合も、普段からハイブリッド型で授業を行っていれば、状況に応じて適切な学習環境を構築することができるはずです。
今回ご紹介したことを参考に、ハイブリッド型授業を活用して、生徒たちの学びを止めない授業を実現していきましょう。
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