学校教育におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)とは?

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身の回りに多くのデジタル技術が取り入れられていく中、さまざまな現場で「DX」という言葉が聞かれるようになりました。そしてその波は教育現場にも押し寄せていて、現在「教育DX」が大きな注目を集めています。
しかし、漠然と教育DXが重要なのは分かっているものの、その詳細まではよく理解できていないという方も多いのではないでしょうか。
そこで今記事では、学校教育におけるDXの概要とそれによって得られるメリット、解決しなければいけない課題などについて詳しく解説していきます。

そもそもDX(デジタルトランスフォーメーション)とは何か

DXとは “Digital Transformation” の略称で、日本語に訳すと「デジタルの変容(変革)」という意味になります。デジタル技術を用いることで、生活やビジネス、教育など、私たちの身の回りのあらゆることが良い方向へと変わっていくことを指す概念です。もともとは2004年にスウェーデンのエリック・ストルターマン教授によって提唱された概念ですが、高度にデジタル化が進む現代社会を的確に表しているため、世界中さまざまな分野の文脈で使われるようになりました。
ちなみに、なぜ Digital Transformation なのに略称がDTではなくDXなのかというと、trans- の部分には「~を超える(交差する)」という意味があり、trans-の付く単語は英語圏でしばしば交差を表す意匠 X で呼ばれることに由来しています。

教育DXとは?

教育DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、その名の通り教育においてデジタル変革が起こることを意味します。より具体的に定義するとすれば、「教育DXはデータやデジタル技術を活用した教育を行うことで、学習のあり方や教育手法、教職員の業務など、学校教育のあらゆる面において変革を行うこと」となります。

教育DXは単なる「教育のデジタル化」ではない

教育DXが意味するのは、ただ教育をアナログからデジタルに切り替えることではありません。紙とペンからデジタル端末へ切り替えるなど、単に教育で使う道具をデジタル化したとしても、そこで行われる学習が同じなのであれば、それはDX(変革)とは言えないはずです。
教育DXを実現するためには、教育のデジタル化を進めたうえで、それを活用して従来とは異なる学習環境を構築し、行われる教育の中身をデジタルに変革していくことが求められます。

教育DXと類語との違い

教育のデジタル化が急速に進んでいることもあり、教育DX以外にも、教育とデジタルの関係を表す似たような言葉が多く存在しています。ここでは、その中でも代表的なものとして「ICT教育」「GIGAスクール構想」「アフターGIGA」の3つを取り上げ、教育DXとの意味の違いを確認していきましょう。

教育DXとICT教育の違い

ICT教育のICTは “Information and Communication Technology” の略称で、日本語にすると「情報通信技術」という意味です。情報通信技術とデジタルはほぼ同義なので、「ICT教育≒教育のデジタル化」と捉えてしまって問題ありません。
教育のフォーマットをデジタル化することがICT教育であるなら、教育DXはフォーマットだけでなく内容の変革も含んだ概念です。つまり、ICT教育は教育DXを実現するための最初の一歩ということになります。

教育DXとGIGAスクール構想の違い

GIGAスクール構想とは、すべての生徒が等しくICTによる教育を受けられるよう、生徒1人1台の学習端末の整備や、それを利活用するためのクラウド環境の整備を主眼とする教育構想のことです。
GIGAスクール構想は2019年から文部科学省主導で取り組まれていて、コロナ禍によるリモート授業の需要の高まりなどもあり、実現が急速に進んでいます。ちなみにGIGAは “Global and Innovation Gateway for All” の略称で「すべての子どもへ世界と革新への門戸を開く」といった意味です。
1人1台端末やクラウド環境は、教育DXを実現させるために不可欠な要素ですが、あくまで一部に過ぎません。そのため、教育DXはGIGAスクール構想が目指すべきゴールのようなものだと言って良いでしょう。

教育DXとアフターGIGAの違い

上述のGIGAスクール構想が実現した後に訪れる状況のことを総称して「アフターGIGA」と呼ぶことがあります。
ひとくちにアフターと言っていますが、そこで語られるのはインフラ整備やセキュリティ問題など、GIGAスクール構想を進めていくうえで表面化してくる課題や問題点の数々です。そのため、アフターGIGAという言い方は現状明るい意味合いではなく、注意を促すためのタームとして使われがちです。
教育DXは、言ってみればアフターGIGAを乗り越えた先に見えてくる到達点です。出てくる課題や問題点を1つひとつクリアしていくことで、これまでとは全く異なる変革された世界として教育DXが達成されるはずです。

↓アフターGIGAについては、こちらの記事でさらに詳しく解説しています↓

アフターGIGA|GIGAスクール構想の現状と課題、解決方法とは – 教育機関向けGoogle for Education 情報発信サイト

文部科学省の主導で進められたGIGAスクール構想によって、多くの学校にデジタル端末が普及しました。GIGAスクール構想を地に足が付いたものとして実現するためには、その後の運用方法が非常に重要な意味を帯びてきます。そこで今記事では、端末導入の次なるフェーズである「アフターGIGA」における課題と、その解決方法について解説していきます。

教育現場にDXを導入することで得られるメリットとは?

教育DXが実現すれば、教育における手段と内容の双方に大きな変革が起こり、多くのメリットを得ることができます。ここでは、その中でも代表的な3点をご紹介してきます。

オンライン授業による教育のハイブリッド化

教育DXにより、教育のハイブリッド化が実現します。
ハイブリッドとは「異なる種類をかけ合わせる」という意味ですが、ここでは特に「オフラインによる対面授業」と「オンラインによるリモート授業」をかけ合わせる「ハイブリッド型授業」のことを指しています。
対面授業とリモート授業を組み合わせて実施すれば、学校に来られない生徒に対しても同水準の学習環境を提供することができます。その結果、不登校などで教室での授業が受けられない生徒の学習支援ができたり、感染症や自然災害で生徒たちの登校が難しい場合でも学習を止めずに済んだりなど、多くの派生メリットが期待されます。

デジタル教科書、デジタル教材による学習の効率化

デジタル端末を使った学習では、デジタル教科書やデジタル教材を使って、アナログ学習では実現できないさまざまな学習効果を得ることができます。
まず、デジタル教科書とはデジタル端末上で閲覧することに最適化した教科書データです。紙の教科書と同等の情報量が端末上で確認できるだけでなく、音声やアニメーションなどの外部情報と紐付けすることもできるので、紙の教科書よりも多くの情報に触れることができるようになります。

↓デジタル教科書については、こちらの記事でさらに詳しく解説しています↓

デジタル教科書とは?導入する際のメリット・デメリットを解説します! – 教育機関向けGoogle for Education 情報発信サイト

GIGAスクール構想の実現に向けて、各学校で1人1台のデジタル学習端末の整備が進んできました。しかし、デジタル端末で効率的に授業を行うためには、ディスプレイ上で閲覧する「デジタル教科書」の存在が必要不可欠です。そこで今回の記事では、現在注目を集めているデジタル教科書とは何なのかという概要から、導入するメリットデメリット、閲覧するための具体的な方法に至るまでを詳しく解説していきます。

続いて、デジタル教材というのはデジタル端末上で使用できる学習支援ツールの総称です。多くはアプリケーションの形で提供されていて、生徒の理解度に応じて個別最適化が進むAIドリルなどが有名です。最近ではEdTech(Education + Technology)サービスという名称でも広まってきています。
具体的なEdTechサービスは以下のサイトから検索できるので、興味のある方はいろいろと見比べてみてください。
EdTechサービス:一覧からさがす | 未来の教室 ~learning innovation~

CBTシステムによる作業負担の軽減

CBTとは “Computer Based Testing” の略称で、コンピュータ上で行うテストのことを指します。
教育DXが実現し、教師も生徒も自分用のデジタル端末を所持している状態であれば、校内テストをすべて端末で実施することができ、教員による紙面作成や回収などの作業負担が大きく軽減されます。
また、CBTシステムを活用すると学習状況の管理もできるので、生徒ごとに管理する手間が省け、生徒側も自分の学習プランを立てやすくなります。
現在では文部科学省が開発したCBTシステムであるMEXCBT(メクビット)も登場していて、今後教育DXが実現されていく中でCBTシステムは欠かせない存在となっていくことが予想されます。

↓MEXCBT(メクビット)については、こちらの記事でさらに詳しく解説しています↓

MEXCBTと学習eポータルとは?文部科学省が推進する両システムを詳しくご紹介 – 教育機関向けGoogle for Education 情報発信サイト

GIGAスクール構想の下で1人1台の学習端末整備が進んできた中、オンライン学習システム「MEXCBT(メクビット)」が、本格的に導入され始めます。しかし、「MEXCBT」および関連システムの「学習eポータル」について、まだ詳細を知らない方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、文部科学省が推進する新システムであるMEXCBTと学習eポータルの特徴や、両者の違いについて詳しく紹介していきます。

教育DXを実現させるための課題とは?

実現すれば多くのメリットが得られる教育DXですが、その過程では課題もあります。
先述の通り、その多くはアフターGIGAの課題として現在表面化し始めています。これらの課題を1つひとつクリアしていくことが、教育DXの実現には欠かせません。詳しく確認していきましょう。

インフラの整備と維持

教育DX実現にあたって、そこで使う端末とそれを使うためのクラウド環境といったインフラの整備が必須なのは言うまでもありません。実際、GIGAスクール構想が進んだことで多くの学校でインフラ整備が整ってきています。
しかし、整備とともに重要なのがその維持です。デジタル端末は使用していく中で故障や破損、経年による買い替えなどが必要になってきますし、クラウド環境も一度設置すれば安泰というわけにもいきません。今後も定期的なメンテナンスが必要となってくるでしょう。
将来的に国がそれらの費用をどこまで補助・負担してくれるのかは不透明なので、せっかく走り出したデジタルでの学びを止めないためにも、インフラ維持問題は常に考えておくべき懸案事項だと言えます。
また、これからデジタル端末を導入する高校の場合は、初回のインフラ整備にかかる費用はもちろんのこと、その後の維持についても視野に入れて業者などを選定するのが良いでしょう。

セキュリティ対策

世界的にDX化が進む中で、それを悪用したサイバー犯罪の件数も比例して増えています。大企業の情報漏洩なども日々ニュースで取り上げられていて、今後インターネット上で生徒の個人情報などを管理していくうえでは、セキュリティ対策が大きな課題になってくるのは間違いないでしょう。
事実、警察発表によると2021年のサイバー犯罪の検挙件数は12,275件で、2020年の9,875件を大きく上回って増加しています。
現状これらの被害は企業が中心ではありますが、今後教育DXが進んでいくことで、学校もそのターゲットに含まれることは十分考えられます。生徒たちの個人情報をはじめとした重要情報を守り抜くためにも、高い水準での徹底したセキュリティ対策が求められます。
参照:令和3年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について(速報版)|警察庁

教職員のICTリテラシー

教育DXの実現には、教育設備のICT化や扱うソフト・ツールの拡充に加えて、それらを扱う教職員のICTリテラシーが必要不可欠です。
たとえば、すでに学校側でCBTシステムを導入していて、端末で小テストを作成して生徒の回答データをいつでも集められる状態にあったとします。しかし、教員がそのシステムを使いこなせずに、いつまでも紙による小テスト実施を続けていたとしたら、せっかくのシステム導入も意味がありません。それでは一向に教育DXが進まず、ただインフラの維持費用とセキュリティリスクが高まっていくだけになってしまいます。
とはいえ、教員にもICTに対する向き不向きがあるため、一律に高いリテラシー水準を求めるのも酷なものです。そのため、ICTに明るい教員が使い方をレクチャーしたり、質問対応したりすることで、苦手な教員のICTリテラシーを高める工夫をしていくことが重要です。
また、デジタル端末の販売業者の中には、学校向けに使い方のセミナーを開いたり、直接学校に訪問して教えてくれたりするところもあるので、これから導入を検討する場合はそのような業者を選ぶと良いでしょう。

教育DXを進めて、1人ひとりに最適な教育を実現しよう

現在、文部科学省主導によってGIGAスクール構想が推進され、小中学校における1人1台端末の整備もほぼ完了した状態にあります。そのような中、次に求められるのはデジタル技術による教育の変革を意味する教育DXです。
とはいえ、学校にデジタル端末を導入したものの、なかなか使いこなせずにいるというご担当者様も多いのではないでしょうか。
弊社ミカサ商事は、Chromebook が国内で展開された当初から Google の正規販売代理店として、そしてこれまでに全国400校以上の学校様や地方自治体様へ実際に端末を導入してきた実績を活かし、端末導入後のお悩みサポートを実施しています。
週1~3日の頻度で直接訪問して研修やコーチングを行う「ICT活用推進コンサル派遣プラン」と、主にオンラインでフォローアップを行う「ICT活用推進リーダー養成プラン」という2種類のサポートをご用意しております。そのため、学校様のお悩み状況やご予算に応じて、適切なサポートを受けていただくことが可能です。
教育DXの実現に向けて、端末導入後の活用方法にお悩みのご担当者様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。