文部科学省が主導する取り組みであるGIGAスクール構想では、日本全国の学校の生徒1人に1台タブレットを含むコンピューターと高速ネットワークの整備が必要とされています。その中で重要なのが学校側のセキュリティ管理です。
学校では個人情報を扱うケースもあるため、GIGAスクール構想によってタブレットやパソコンが生徒に行き渡った後には、セキュリティ対策や安全面の管理も必要です。
本記事では学校におけるタブレット・パソコン導入の現状を踏まえ、学校のタブレット・パソコン導入の目的と効果、セキュリティ管理についてご紹介していきます。
学校におけるタブレット・パソコン導入の現状
もともとGIGAスクール構想は令和元年度補正予算に盛り込まれた取り組みですが、令和3年時点で、まだネットワークの整備とタブレット・パソコンの利活用が進んでいない小中学校もあります。また、今回の補助金の対象とならなかった高校では、端末購入費用を家庭に負担してもらう必要があるため、まだ一人一台の端末導入が進んでいないのが実情です。
文部科学省から発表された「端末利活用状況等の実態調査」では、具体的な割合が次のように公表されています。全国の公立小学校等の96.1%、中学校等の96.5%が、「全学年」または「一部の学年」で端末の利活用を開始したことが公表されました。さらに全自治体等のうち1,742自治体等(96.1%)が整備済み、70自治体等(3.9%)が整備未完了となっています。
なぜ学校ではタブレット・パソコン導入が必要なのか?
学校におけるタブレット・パソコン導入が必要な理由は、GIGAスクール構想実現の目的を確認するとみえてきます。
GIGAスクール構想の目的は、生徒側と教員側それぞれにあります。生徒側の目的は、生徒の個性に応じた教育を実現するためで、教員側には、働き方改革によって教員の業務を支援するという目的があります。
生徒一人一人に個性があり、生徒によって学習の理解力や学習を進める進度も異なります。もちろん理解力や進度を向上させるために、生徒個人が学習に向き合い努力することも重要なテーマです。しかし、生徒全員がそれを実現できる学習環境かと言われれば、そうではないケースもあるでしょう。
実際に家庭環境をはじめとするさまざまな要素によって、生徒の能力には違いが出てきます。そのような状況下で、全ての生徒の個性に合わせた学習が必要とされており、その一環としてGIGAスクール構想によるパソコン・タブレットの活用が推奨されています。
また教員の業務は、パソコン・タブレットの活用で大きく削減できる業務があります。例えばテストをする場合は、用紙の用意・印刷・配布・実施・回収・採点といった流れがありますが、パソコン・タブレットを活用することで用紙の用意・印刷・配布・回収業務が削減できます。
これはあくまでも一例で、その他にも教員の業務で削減できる箇所は多種多様です。こうした業務削減をパソコン・タブレットの活用で補うのも、GIGAスクール構想の目的です。生徒・教員それぞれにGIGAスクール構想では目的があり、そのためにパソコン・タブレットの導入が必要とされています。
GIGAスクール構想に伴うICT環境整備
GIGAスクール構想では、パソコン・タブレットの他にも、校内LAN・ネットワークの整備も必要です。すでにネットワークを整備している場合でも、老朽化に伴い通信障害が起きたり、通信速度が遅いなどの課題があります。
また管理体制が整っていない場合、管理やセキュリティの穴から外部からアクセスされる危険性もあります。そのため単に、校内LAN・ネットワークが整備されていれば良いわけではなく、GIGAスクール構想に伴って校内LAN・ネットワーク整備、管理体制の充実も進めましょう。
学校のタブレット・パソコン導入の目的と効果
ここでは学校における、より具体的なタブレット・パソコン導入の目的と、それによる効果をご紹介していきます。
生徒の主体的な学びを支援
生徒の個性に応じた教育は、生徒の主体的な学びを支援することで実現します。また次のような目的や効果もあります。
グループワークを推進
タブレット・パソコンの導入によって、より活発なグループワークを推進できます。例えばタブレットで撮影した写真や動画、録音した音声を活用することで、より自由な表現が可能になります。また従来のようにテキストを基本としたグループワークに比べ、生徒の興味・関心を引き立てる効果も期待できます。
調べ学習を効率化
タブレット・パソコンを活用することで、調べ学習を効率化し生徒の興味・関心に沿って情報にアクセスできるようになります。また従来のように辞書で調べ物をする場合には、情報が文章のみというケースも多くありましたが、インターネット上で調べれば、手軽に画像や動画、音声も情報を得られます。よって調べ学習がより充実したものになります。
他校との情報交換にも
タブレット・パソコンを活用することで、インターネット上で外部との情報交換も可能です。実際に近隣の学校はもちろん海外の生徒との情報交換や異文化交流も実現します。英語教育の推進も始まっており、その点でも海外との情報交換は有用なものになります。
教員の業務効率向上
教員の業務効率向上の面では、次のような目的と効果が挙げられます。
スムーズな教材の共有
授業中、生徒へスムーズに教材を共有できます。例えば教材として、特定の動画を見てほしい場合には、生徒へURLを一斉送信することで、簡単に教材共有が可能です。これによって教員が教材をプリントして配布したり、プロジェクターやスクリーンを用意する必要がなくなり、教材を共有する手間や時間を削減できます。
また教員同士で教材を共有して会議をしたり、他のクラスの成績を確認するなどの際にも、ファイルを送るだけでアクセスできるようになるため、教員間の共有の際にもメリットがあります。
テストの採点やアンケート調査の効率化
学校教育で欠かせないのがテストの実施と採点です。タブレットやパソコンを導入することで、テストの配布や回収、採点業務までも効率化することができます。また、テスト用紙の紛失や盗難などの、リスクを削減する効果も期待できます。
授業の振り返りや生徒の意見を反映させて決め事をしたい時には、アンケート調査のリンクを生徒へ送信するだけでアンケートを進められ効率的です。
各種データを一元管理
従来のように紙でデータを管理していると、盗難や窃盗、盗み見などさまざまな危険性が伴います。その点、各種データをタブレット・パソコンで一貫して管理しておけば、セキュリティ的に紙よりも安全性が高く保てます。またペーパーレス化によって、各種データへのアクセスも容易になり、データ共有の際にもスムーズに活用できます。
学校のタブレット・パソコン導入におけるセキュリティ管理
学校がタブレット・パソコンを導入した際にもっとも注意する必要があるのは、セキュリティ管理です。学校のタブレット・パソコンでは、生徒はもちろん、教員や保護者の個人情報まで扱うケースもあるため入念な管理が欠かせません。
生徒・教員の個人情報を守る重要性
昨今は特に物騒な事件が発生しているのも事実で、生徒や教員をはじめ学校に関わる人々が危険に晒されないためにも、個人情報を守ることが重要です。個人情報には氏名はもちろん住所や電話番号、家族のことなどさまざまな情報があります。そうした情報を悪用し、学校以外の場所で事件に巻き込まれてしまうケースも考えられるので、個人情報管理には最善の注意を払いましょう。
教員が一元的に管理できる仕組み・システムを
教員はもちろん、生徒にもタブレットやパソコンが行き渡ることで、生徒自身も比較的容易に情報を扱えるようになります。また、インターネット上でのやり取りの頻度がますます高まっていくことが予想されます。それに伴って、メールやチャットツール上での不適切なやり取りや、許可なく外部に重要なファイルを共有してしまうなどのトラブルには、一層厳重な注意が必要です。
また、扱うデータに違法性がないか、誹謗中傷などがないかなど内容の確認が必要になる場合もあります。データを効率的に管理できる仕組み・システムのソフトやアプリもあるので、このような観点でタブレット・パソコンの導入を進めるのも重要です。
学校側はどこまで生徒用タブレット・パソコンの管理をすべきか?
ここまでセキュリティ管理の必要性について解説しましたが、生徒のプライバシーや、利用上の自由との兼ね合いで、管理をどこまですべきかの疑問が浮かぶ方もいらっしゃるのではないでしょうか。
文部科学省が公表している「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」によれば、児童生徒の1人1台端末は、一元的に管理を行い、ログイン・アプリケーションの利用履歴やログを保持することが推奨されています。
引用:「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」 (令和3年5月版) ハンドブック- 文部科学省
文部科学省の方針では、できる限り学校の管理下のもとで、必要に応じてデータを参照できるようにしておくことを重要視するということが読み取れます。
※ここで登場している「MDM」とは、複数のタブレット・パソコンを一元管理し、特定の設定などを実施できるツールの総称です。例えば、学習者用端末として人気の Chromebook の場合は、Google が純正 MDM「Chrome Education Upgrade」を用意しています。
Chrome Education Upgrade についての詳細はこちら↓
Chrome Education Upgrade とは? Chromebook の MDM を徹底解説【学校向け】
学校が安全な管理のもとタブレット・パソコンを導入するためにできること
個人情報を守る重要性を理解すること、一元的に管理できる仕組み・システムを導入することは、学校が安全な管理のもとタブレットを導入するために重要なテーマです。その他にも学校側からタブレット・パソコンを導入するにあたり、保護者への説明体制を強化しておくことも重要です。
①管理設定によってリスクを防ぐ・セキュリティ対策を行う
利用する端末やICTツールによっては、端末やアカウントの設定を変更することによって、利用上の安全性を高めることができます。
例えば、GIGAスクール構想で半数以上の自治体に採用されたタブレット端末「Chromebook」では、「Chrome Education Upgrade」という端末管理ツールを使えば、容易かつ柔軟に管理設定を行うことができます。
学校で管理者が行うべきセキュリティ設定とは?
学習者用端末としては、企業にも共通する基本的なセキュリティ対策のほかに、学校現場で子どもが使うものということを踏まえた、安全性向上の工夫が必要です。
学校でできるセキュリティ設定や管理の例(Google Workspace for Education や Chromebook の場合)
- 不健全と思われるページや危険性のあるサイトを、生徒の検索結果に表示させないようにする
- 生徒が端末を紛失した際に、管理者によって、第三者が操作できないようロックする
- 個人情報が含まれるメッセージやファイルが送信されていないか、自動で監査する
- 生徒のアカウントでは、ファイルを学校外の人に共有できないようにする
- 学校で配布されたアカウント以外(個人のGoogle アカウントなど)では端末にログインできないようにする
など
しかし、端末やアカウントでの管理設定でできることは各OSごとに異なります。もし、標準で備わっている機能では求めているセキュリティ水準を満たすことができないという場合は、有償のフィルタリングソフトなどを別途導入するなどの対策を行いましょう。
②児童生徒に守ってほしい利用上のルールを決める
学校側でできるセキュリティ設定だけでなく、児童生徒の意識や行動についても対策することで、設定面と意識面の両方からセキュリティ対策を行うことができます。
特に、一般的な情報モラルの他に、学校独自の利用ルールを設けておくことで、指導対象となるかの線引きができ、学校全体で安全を守ることができます。
- 危険から身を守るためのルール
・インターネット上のサイトでむやみに会員登録などを行わないこと
・18歳以上であることの確認が求められた際は速やかにサイトを閉じること
・万が一、あやしいサイトにアクセスしてしまった場合は、すぐに先生に伝えること
など - 個人情報を守るためのルール
・他人の タブレット・パソコンを使用しないこと
・インターネット上に校内の写真や自分や他人の情報を許可なく載せないこと
・アカウントのパスワードは他人に見られないように保管し、定期的に変更すること
・人が写った写真を撮る時には相手の許可を得ること
など - その他、学校で決めた利用ルールなど
・タブレット・パソコンの設定を自分で変更しないこと
・学校で決められた場所や時間以外は、所定の場所にしまっておくこと
・タブレット・パソコンからUSB や CD などに書き込みを行わないこと
など
③保護者向けに説明資料を用意する
セキュリティ設定や利用のルール決めが完了したら、それを保護者に説明するための資料か、案内文書を用意します。こうすることで、保護者や生徒の協力意識を強くできるほか、保護者にとっても安心感を得られる材料となります。また、万が一の有事の際にも学校としてどのように対策をしていたかを示す資料となります。
実際のケースでは、資料には以下のような内容を記載し、端末を購入する際、もしくは配布する際に保護者向け案内として配布する学校様が多いようです。
- 導入の目的
- 導入される端末の安全性やスペックについての説明
- 学校が行っているセキュリティ対策の内容の説明
- 守ってほしいルール
- 故障などのトラブル発生時の対応フロー
学校が端末を一元的に管理するためには Chromebook がおすすめ
タブレット・パソコンを導入する際にはセキュリティ対策や、一元管理の機能に定評がある Chromebook の導入がおすすめです。生徒の個性に応じた教育や教員の業務を支援するための機能に加え、充実したセキュリティ管理機能が搭載されている点は、学校側にとって大きなメリットです。上記でご紹介したそもそも問題が起きない対策を進めるといった意味でも、Chromebook はおすすめです。
生徒の主体的な学びを支援するためには Google Workspace for Education
生徒の主体的な学びを支援し、教員の業務効率向上を実現するためにはソフトウェアやアプリの活用も必須です。ソフトウェアやアプリを検討している場合には、Chromebook と同じ Google から提供されている、Google Workspace for Education がおすすめです。学びを支援したり業務効率向上を実現する機能はもちろん、生徒や教員の個人情報を守るための一元的な管理機能も充実しています。
ミカサ商事では、教育機関での Google アカウントの年次更新代行や、管理者向けの運用支援を承っております。また Google for Education 認定トレーニング講師による管理者研修も実施しております。
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