連載コラム 進化を続けるICT利活用の成功校 田園調布学園の実際 -ICT教育の取り組み- Chromebook の活用 

第10回
「『小学校』における Chromebook の活用②」

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前回のコラムから小学校における Chromebook の活用について、調布大塚小学校の玉野校長先生にお話を伺っております。今回のコラムでは、ICT活用に関する「運用・環境面」について具体的にお伺いします。

玉野麻衣(東京都大田区立調布大塚小学校 校長)

玉野麻衣先生

東京都立特別支援学校、東京都公立小学校教員、東京都教育庁指導部、稲城市教育委員会教育部、東京都教職員研修センター研修部指導主事、東京都公立小学校副校長、文京区教育委員会教育センター統括指導主事、世田谷区立奥沢小学校校長を経て2021年4月から現職。
前全日本音楽教育研究会小学校部会長、東京都小学校音楽教育研究会副会長、現在、全国特別支援学級・通級指導教室設置学校長協会副会長、東京都特別支援学級・通級指導教室設置学校長協会会長


村山先生

村山先生

調布大塚小学校ではいつ頃から1人1台環境をスタートされましたでしょうか。
玉野先生

玉野先生

本校でスタートした当時、私は世田谷区の学校におりましたが、だいたい同じ頃にスタートしています。私が本校に着任した2019年は、タブレット端末(Chromebook)は学校に届いたもののネットワーク環境があまり良くない状況でした。それは大田区(教育委員会)側も分かっていて、まずはとにかく使ってみて現場でわかったことを上げて欲しいというスタンスで環境が改善していった感じです。
村山先生

村山先生

校内ではどのようにしてICT活用が進んでいったのでしょうか?
玉野先生

玉野先生

初期の頃は、教員に向けて「どの授業でも使って!」と言っていましたが、教員の中でもタブレット端末を授業で使う人・使わない人の個人差が大きくありました。本校の場合にはGIGA推進チームとして研究・生活・特別活動の分掌から1人ずつ、計3名の教員がICTに関するメンバーとして組織しています。そしてICT支援員さんにもお願いして、情報を集めたり研修を企画したりしていますが、日々の業務内容としては機器の管理に時間がかかっています。
また児童に向けては、オンライン授業の練習をかねて、土曜日に全校一斉に各ご家庭から実際にオンライン授業に参加(接続)をしてもらい、週明けに接続状況についてどうだったか確認を行っていました。例えば3年生はオンライン授業の休み時間に、自宅にあるお気に入りのぬいぐるみを紹介していたり、自分自身で設定画面から壁紙の背景を設定したり、すぐに慣れているようでした。
村山先生

村山先生

児童さんが使用されている機器や、運用について教えていただけますか。
玉野先生

玉野先生

端末については、大田区ではLenovoの300eを使用しています。毎日、各家庭で充電をして学校に持ってきてもらっています。ご家庭にインターネット接続の環境がない場合には、モバイルルーターを区より貸し出ししています。端末用のケースは区が購入しています。
村山先生

村山先生

以前私が学校にお伺いさせていただいた際に、とある学年がバッテリー交換のタイミングであると教えて頂きましたが、バッテリー交換は定期的に行っていらっしゃるのでしょうか。
玉野先生

玉野先生

3年程度でバッテリー交換を行っています。タブレットやアダプターは6年間、児童が自分専用の端末として使用します。その児童が卒業したら次の1年生がメンテンナンス済の当該端末を引き継いで使用します。自分たちが使っていた端末を次の1年生が使うというサイクルなので(元々、区からの貸与物ということはありますが)皆それぞれ丁寧に扱っていると思います。ちなみに、本校の場合、端末の故障件数は月に2台程度です。
村山先生

村山先生

児童さんが端末を活用する上で、学校として(運営面で)大切にされていらっしゃることはありますでしょうか。
玉野先生

玉野先生

運用面で大切にしているところは、「文房具と同じように使う」、「予習→授業→復習のサイクル・家庭学習の定着」、「家で充電して持ってくる」(持ち帰らなければならない状況[必要性]をつくる)といったところです。
村山先生

村山先生

私自身も玉野先生と同じく、ICT活用では、いかに教科書やノート筆記用具と同じ並びで端末を授業に活かせるかがキーになると思います。本校に視察来校される他校様の話から、たまに「端末忘れ」の話題が挙がりますが、端末があまり授業で使われていないと、端末を持っていく意義を感じられなければ、学校に持って行く習慣がつかず、重い思いをして持っていくことがいずれは億劫になったりすると思いますので「忘れたら周りに後れをとって自分自身が困るから、必ず持って行かなくては」となるような状況を作ることができるかは、特に端末配付直後のはじめのうちは大切ですね。
Chromebookで勉強中の生徒

大田区かるた(5・7・5)を作成中。皆、それぞれのスタイルで端末を使用している。


村山先生

村山先生

特に小学生は、自身が占有して扱える端末を手にすると、家でも様々に遊びたくなったり、そればかりに夢中になったりするような勝手なるイメージもあるのですが、そのあたりはどのようなアプローチをされていらっしゃるのでしょうか。
玉野先生

玉野先生

例えば、旧来の「連絡帳」をなくして、翌日の時間割や持ち物など、今は Google Classroom を通じて配信してます。 Google Classroom での連絡を保護者の方も見る(見なくてはならない)状況を作っています。
Chromebook は大田区からの貸与物でもある(ご家庭での購入物ではない)ので、学校としても保護者の方に子供が Chromebook を扱っている様子を見てほしいという思いがあります。
村山先生

村山先生

子供たちも成長するにつれて、いずれは「自分自身のアカウントは自分(のみ)で管理」していくことになりますが、保護者の方からすると特に初めのうちは、学校での学びの様子や学校での子供の様子がわかることで、端末利用についても(子供からすれば、親が見ているという気持ちが働いて、抑止力?にもなり)安心されるご家庭は多そうですね!
玉野先生

玉野先生

Google Classroom でのやり取りで言えば、児童にはその日の振り返りを教員の投稿のコメント欄に投稿させているのですが、小学2年生でもしっかりと長文で振り返りを書けるんです。教員が配信した連絡事項の投稿等についても「ありがとうございました」とお礼を返信してくれる子供たちも多いです。
村山先生

村山先生

それは素晴らしいですね!どうしてもデジタル上のやり取りになると、画面の向こう側に相手がいるという意識が薄れ、単なる「通知」としてお知らせを受け取る子もいるかと思います。対面のコミュニケーションと同じくして、デジタル上でもやり取りをされているのは、児童さんたち素敵ですね。

【資料】大田区立調布大塚小学校タブレット利用について

調布大塚小学校学習用タブレットのきまり

https://www.ota-school.ed.jp/choufuootsuka-es/letter/taburetto.files/taburettoru-ru.pdf

学習用タブレットの使用について

https://www.ota-school.ed.jp/choufuootsuka-es/letter/taburetto.files/taburettonosiyounituite.pdf

→何の為にタブレットがあるのか、どのように使うことが望ましいのかがよくわかる、玉野校長先生からのメッセージ。このようなことを常日頃から児童さんに向けて、意識づけされているからこそ、児童さんも自ずと「よりよく使おう」という姿勢になっているのだと感じられます。

今回は、Chromebook の運用・環境面をテーマに、多岐に渡りお話を伺いました。
次回のコラムでも引き続き、玉野校長先生から「『小学校』という場・発達段階における端末導入前・後の変化」についてお話を伺います。

コラムを最後までご覧いただき、ありがとうございました。
また次回のコラムも宜しくお願いいたします。