連載コラム 進化を続けるICT利活用の成功校 田園調布学園の実際 -ICT教育の取り組み- Chromebook の活用 

第9回
「『小学校』における Chromebook の活用①」

コラム09 「小学校」におけるChromebookの活用①
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今回のコラムでは、本校のご近所に位置する小学校「大田区立 調布大塚小学校」の玉野麻衣 校長先生より「『小学校』における Chromebook の活用」についてお話を伺います。

調布大塚小学校の卒業生には毎年のように本校にご入学頂いているのですが、中等部に入学直後の技術の授業にて、小学校でのICTの利用経験をフォームで問うと、いつも事細かに文量多く、調布大塚小学校出身の生徒は回答して教えてくれます。
調布大塚小学校ではどのような学校目標のもとで、具体的なお取り組みをされているのか個人的に気になっていたところ、偶然校長の玉野麻衣先生とお知り合いになる機会を得ることができ、今回のインタビューの半年ほど前に一度、私自身学校を見学させて頂きました。そして、この度コラムで「『小学校』における Chromebook の活用」を取り上げるにあたり、是非とも調布大塚小学校のお取り組みをご紹介したいと思い、玉野校長先生にご相談をしたところ、快くお引き受けくださり、本コラムでの紹介に至りました。

以下に玉野麻衣先生のプロフィールをご紹介させていただきます。

玉野麻衣(東京都大田区立調布大塚小学校 校長)

玉野麻衣先生

東京都立特別支援学校、東京都公立小学校教員、東京都教育庁指導部、稲城市教育委員会教育部、東京都教職員研修センター研修部指導主事、東京都公立小学校副校長、文京区教育委員会教育センター統括指導主事、世田谷区立奥沢小学校校長を経て2021年4月から現職。
前全日本音楽教育研究会小学校部会長、東京都小学校音楽教育研究会副会長、現在、全国特別支援学級・通級指導教室設置学校長協会副会長、東京都特別支援学級・通級指導教室設置学校長協会会長

玉野麻衣 校長先生・大田区立調布大塚小学校について


村山先生

村山先生

玉野校長先生、この度は大変ご多忙中にも関わらず、お時間を設けてくださり、どうもありがとうございます。(読者の皆様も、ご紹介させて頂いたプロフィールから十分に玉野先生のご多忙さがお分かり頂けるかと思います)
今回は、「『小学校』における Chromebook の活用」というところで、小学校段階におけるICTの利活用や、先生のご専門領域である「特別支援」×「ICT」の効果・可能性について、お伺いが出来ればと思っております。
ICTに関するお話をする前に、玉野先生について、そして学校情報について、お話をお伺い出来ますでしょうか。
玉野先生

玉野先生

まず私自身についてですが、元々ピアノを弾くことが好きで、高校生の頃から「今後も音楽と関わっていたい」という思いがあり、東京都の音楽の教員(専科)として教員生活をスタートさせました。校長職の現在では、授業を受け持ってはおりませんが、各地区の音楽研究会に講師として伺っています。令和5年度の校内音楽発表会では、教員全員で児童にサプライズ演奏を披露することができて、児童も喜んでくれました。
村山先生

村山先生

半年ほど前に、児童さんの学校生活の様子を見学させて頂きましたが、1学年あたり2クラスほどの学校ということもあってか、校内はアットホームな雰囲気を感じました。そして児童さんたちはのびのび・いきいきとされていながら、各々が自立している印象を受けましたが、これは以前ご紹介頂いた「イノベーションシート」の影響もかなり大きいのではないかと思いました。あのようなシートは、どこの学校でも掲げているものなのでしょうか…?
玉野先生

玉野先生

調布大塚小学校では、児童に対して「イノベーションシート」を使った取り組みを行っています。 児童は、学期始めに3つのコンピテンシー(下図参照)について、意識して行動したいことを「イノベーションシート」から選んで記入して、月ごとに自分の行動を振り返り、シートに記入していきます。
「イノベーションシート」は調布大塚小学校に着任して、本校独自に始めたものです。OECDからEducation2030(OECD Future of Education and Skills 2030 project)において3つの力が示されたこともあり、学校現場での具現化のための仕組として考えたものです。
小学校生活で見に付けてほしい力

Education2030(OECD Future of Education and Skills 2030 project)

●2019年、OECDのコンセプトノートはこちら(英語)
https://www.oecd.org/education/2030-project/teaching-and-learning/learning/learning-compass-2030/OECD_Learning_Compass_2030_concept_note.pdf
●コンセプトノートの仮訳はこちら(日本語)https://www.oecd.org/education/2030-project/teaching-and-learning/learning/learning-compass-2030/OECD_LEARNING_COMPASS_2030_Concept_note_Japanese.pdf

 

村山先生

村山先生

公立小学校の一校長先生が舵を切って、「目の前の児童にとって必要な力」を小学生が見ても分かる意識しやすいものにして、校内に取り入れ、形を整えられていらっしゃることは、とても素晴らしいと感じました。元々はOECDのEducation2023がベースになっているとは思いますが、(Web上で学校運営協議会の資料も拝見させて頂きましたが、保護者の方も仰っているように)このような力は小学校だけでなく、中学校や高等学校でも通用するもので、社会に出てからも役に立つと思います。
玉野先生

玉野先生

「校内研究」が学校運営の柱と考えているので、これらのコンピテンシーは授業の中でも掲示することで、教師も児童も意識できるようにしてくれています。
来年度予定している学期1回の3者面談では、イノベーションシートを基にリフレクションを行います。
●令和5年度 コミュニティ・スクール大田区立調布大塚小学校 学校経営計画https://www.ota-school.ed.jp/choufuootsuka-es/guide/keieikeikaku.files/R5_keieikeikaku.pdf

 

村山先生

村山先生

このような学校が掲げるポリシーを子供たちの日々の生活の中で常々意識づけさせる(溶け込ませる)ことはそう容易ではないことかと思いますが、調布大塚小学校の児童さんを見ていると、自然と自分達で解釈をして意識して行動が出来ているようにも見受けられました。
玉野先生

玉野先生

これまでの個人面談や通知表の所見は、子供の頭越しに大人が情報共有する形になっていましたが、本来は子供と対話することが大切であると思っています。そのための機能をイノベーションシートに付与したかたちになります。
村山先生

村山先生

「子供と大人の対話」、私自身も重要であると感じます。個人面談の時間は限られているので、そのような形であれば、3者にとってとても有意義な時間となりますね。
玉野先生

玉野先生

今年度、2学期に3者面談を施行したのですが、保護者からも児童本人からもおおむね好評でした。「3者面談は続けた方がいいです」と言ってくれた高学年児童もいました。

今回のコラムでは、「『小学校』における Chromebook の活用」の中身をいきなりご紹介するのではなく、ICTとのより良い関係を築くことにもつながる、「児童が学校生活を送るうえで土台となる部分」について、玉野先生のお考えをお伺い・ご紹介しました。調布大塚小学校の児童さんを見ていると、「みんなが楽しく、過ごしやすい学校」となるよう、ICTについても自然と「より良い使い方をしよう」という心意気が感じられます。単に「情報モラル」や「マナーについて」を学ぶだけではなく、今回のコラム09でお話を伺ったような根底となる「意識」の部分は、端末導入後の日常生活においても大きく影響するように、改めて感じました。

引き続き、「『小学校』における Chromebook の活用」については、次号のコラム10でもご紹介します。

今回も最後までご覧くださりどうもありがとうございました。
また次回もよろしくお願いいたします。