連載コラム 進化を続けるICT利活用の成功校 田園調布学園の実際 -ICT教育の取り組み- Chromebook の活用 

第11回
「『小学校』における Chromebook の活用③」

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第9回のコラムから小学校における Chromebook の活用について、調布大塚小学校の玉野校長先生にお話を伺っております。今回のコラムでは、ICT活用に関する「端末導入の前・後」でどのような変化があったか伺います。

玉野麻衣(東京都大田区立調布大塚小学校 校長)

玉野麻衣先生
東京都立特別支援学校、東京都公立小学校教員、東京都教育庁指導部、稲城市教育委員会教育部、東京都教職員研修センター研修部指導主事、東京都公立小学校副校長、文京区教育委員会教育センター統括指導主事、世田谷区立奥沢小学校校長を経て2021年4月から現職。前全日本音楽教育研究会小学校部会長、東京都小学校音楽教育研究会副会長、現在、全国特別支援学級・通級指導教室設置学校長協会副会長、東京都特別支援学級・通級指導教室設置学校長協会会長
 
村山先生村山先生
早速ですが、小学校という場・発達段階において、端末の導入前・後ではどのような変化があったか教えて頂けますでしょうか。
玉野先生玉野先生
児童にとっては、特に教育的支援での変化が大きいように感じます。書字が苦手な子は、ノートを書かずに板書を写真に撮っても良いですし、振り返りなどを記述するにしても、(手書き以外に)キーボード入力や音声入力など自分自身で選択できるのが良いですよね。手段を自己選択できるようになったことは、大きな変化であるといえます。振り返りや感想など、自分自身の考えや意見を記述する場合、紙に書いてもらうと用紙サイズや記入する枠のサイズが決まっているので、その解答欄に収まるように意識して子供は書きますが、タブレット端末を用いて回答する場合には、文字数が無限大なところも利点ですね。
村山先生村山先生
なるほど、特に特別支援では子に応じた対応が求められる分、ICT機器が大いに活躍しますね。
東京2020 オリンピックを機に児童が作成した 校内のピクトグラム「保健室」
東京2020 オリンピックを機に児童が作成した 校内のピクトグラム 
玉野先生玉野先生
本校の場合では、集団生活が苦手な子供は、保健室からオンラインで授業に参加したり、教室に入れないような子は、YouTube を見ながら、プログラミングを勉強したりしている子がいます。一人一台環境以前の時代であれば、集団の中で我慢をしなければいけない場面もありましたが、今は児童一人一人が端末を所持しているので、安全が確保されていれば、校内のどこにいても良いとすることができています。
村山先生村山先生
それは素晴らしいですね。先生方にはどのような変化がありましたでしょうか。
道徳の時間にクラスメイトの回答を教室前方に提示して共有
道徳の時間にクラスメイトの回答を教室前方に提示して共有 
玉野先生玉野先生
Google Drive を利用して教員同士で教材を共有したり、子供たちへの連絡も Google Classroom を利用したりすることで、お知らせなどの文書を印刷する必要がなくなり、総じて時間短縮に繋がっていると思います。その分、教材研究に充てる時間も生まれ、職員室でも授業や子供たちのことを話している姿が増えました。
村山先生村山先生
連絡帳にその日の連絡事項を書きとっていた時代が懐かしいですね。以前、外部研修の場で知ったのですが、最近の小学校では、朝顔の成長記録を手書きで絵を描くのではなく、写真に撮って記録しているといったことを知り、とても驚きました。
玉野先生玉野先生
ねらいが何かによりますよね。「観察する」となれば、自分で描くことが大切になると思います。本校では、「ICT」を手段・ツールとして、どのように取り扱うか、45分の授業の中で何が大切かを考え、その子たちにあった授業を心掛けています。授業においては、特に、考えたりディスカッションをしたりする部分に時間をかけ、ICT機器を「ディスカッション」や「協働の促進」を図るツールとして利活用することが多いです。子供たちは使い方をよく知っていて、感心させられます。大田区では端末に過度な制限はかけておらず、リスクマネジメントを行いながら、子供たちが自ら考え行動する力を育むことが大切だと考えています。児童には、ICT機器を利活用する中で起こり得るリスクについても、学校生活を通じて自ら考える力を養ってもらいたいと考えています。
今回のコラムでは、大田区立調布大塚小学校の玉野校長先生から、小学校における Chromebook の導入による具体的な変化についてお話を伺いました。特に特別な教育支援が必要な子供たちにとっては、ICT機器を活用することで、様々な場面で手段を自己選択できるようになり、学びの場がより柔軟かつ、個別化されたものへと変化していることがわかりました。GIGAスクール構想のもと、小学校からICT教育が積極的に行われるようになった今こそ、隣接する学校種への理解を深めることが重要であると思います。また、他校種がどのようにICTを活用しているかを知ることで、新たなアイデアや効果的な手法を取り入れることができ、子供たちにとってより充実した学びの場を提供することができると思います。玉野先生、この度はご多忙なところ貴重なお時間・お話を頂戴しまして、どうもありがとうございました!

今回も最後までコラムをご覧くださりありがとうございました。また次回のコラムでもよろしくお願いいたします。