第1回はこちら
小杉さん
さて、今回は Chromebook を導入するまでに行ったことや、その間の校内の様子について語っていきます。
村山先生
今となっては校内の教職員もだいぶ入れ替わり、Chromebook 導入以前の時代を知っている方は、どんどんと少なくなっていますよね。私よりも長く勤務されている小杉さんから見て、一人一台環境が実現する前のICTに関連したエピソードって何か記憶に残っているものありますか?
小杉さん
本校では、校務において共有フォルダ内にあるExcelファイル等を複数人で作業する事が多々ありました。同時編集が出来ないので「入力したいから開いている人はファイルを閉じてください」なんてアナウンスはよくありましたね。あれは、時間の無駄だった…。校務でも同時編集の良さを認識してもらうようになってからは、
Google Workspace for Education を自然と利用する方が増えたように思いますね。一人一台環境以前の生徒の様子で言うと、中1・中2の教室前に2・3台デスクトップパソコンを設置していて、どうしても授業のレポート作成などでデータを操作する際には、(皆使用したい期間が重なるため)よく生徒がPC利用の順番待ちをしていたのを見かけた記憶があります。
Google Workspace for Education を自然と利用する方が増えたように思いますね。一人一台環境以前の生徒の様子で言うと、中1・中2の教室前に2・3台デスクトップパソコンを設置していて、どうしても授業のレポート作成などでデータを操作する際には、(皆使用したい期間が重なるため)よく生徒がPC利用の順番待ちをしていたのを見かけた記憶があります。
村山先生
確かに順番待ちをしている光景はよく見かけました…。生徒が、何かOfficeデータなどを編集したい、作業したい、と思った時には、わざわざデスクトップPCが設置されているエリアに出向いて作業をしなくてはならなかったので、PCを利用するために待っている姿を見ていると、早く一人一人が端末を持ち、クラウド上で同時編集ができる環境にしてあげたいと強く思いましたね。本校では、2014年頃から「いずれは生徒に一人一台タブレット端末を持たせよう」という方向性のもと、まずは校内で教員にiPadを個人貸与、生徒向けにも貸出用iPadの運用をしていましたよね。村山が2017年に入職後、コラム02に記載のような理由から Chromebook を校内に提案して導入端末をiPadから Chromebook に切り替えるに至ったわけですが…。
小杉さん
貸出用iPadは職員室に2クラス分用意していて、授業で使用する度にカートごと授業教室へ移動させ、授業終了後には職員室に戻す、という方式をとっていましたね。毎授業、端末を生徒に配って回収するだけで10分程度時間を浪費するって声も先生方から聞こえていました。この方式を続けている限り「生徒が使いたい時に気軽に使える」という状況になる事はないんだなと思いましたね。
村山先生
2014年から徐々に貸出用iPadの台数を増やしていき、2017年あたりには2クラス分までに台数が増えたわけですが、そのころには、様々な教科でICT機器を活用した授業実践ノウハウが校内にも蓄積され始めていて、最終的には複数教科でiPadカートの争奪戦のようになっていましたよね。この頃あたりから、校内教職員の空気感も「生徒が一人一台端末を持っていたらより便利になって良いのに」と少しずつシフトしていったようにも思います。一人一台環境に慣れてしまった今振り返ってみると、とても懐かしいですね…。
小杉さん
活用が進んできてはいましたが、iPad利用の場合、どうしてもカメラ機能の多用やタッチ操作による作業がメインとなるため、今と比べるとレポートのような長文入力というよりは簡単な文章入力が当時は多かったように思いますね。
~Chromebook 一人一台環境に向けて~
村山先生
さて、ここからは本題に入っていきます。Chromebook 一人一台環境をスタートさせるにあたり、ICT教育推進部(旧:情報環境整備室)では、校内への Google サービスの浸透をはかるべく、様々なことを意識して取り組みました。ここからは、「教職員」・「生徒」・「環境整備」にカテゴリを分けて、それぞれ簡単にお話ししていきたいと思います。
<教職員編>
村山先生
校内に Googleサービスを導入後(割とすぐに)、まずはじめに教職員を対象にした全体研修を行いました。その後も1〜2度、半年間に計2〜3回ほど行いましたね。先生方の個々のPCスキル差は大きいので、最初の段階で躓いてしまって「無理だ、ついていけない」と思われてしまわれないよう、本当に初歩の初歩からお話をして進めていきましたよね。「Google とはなにか」、「ログインとはなにか」、「同時編集ってなにか」みたいなレベルで…。職員室内には、操作等わからないことがあれば、ICT教育推進部の部員に聞いたり、分かる人に質問ができたりする空気感があったので、使い方などについても、じわじわと口コミベースで広まっていった感じはありますよね。
小杉さん
大変失礼な話ですが、自他ともにPCスキルが高くない事を認めている人には研修とは別に個別で補講をしました(笑)この人が使いこなしたら、「あの人ができるなら私も…!」と周りにきっといい影響を与えるだろうと考えての事でしたが、本人からも感謝されましたしやって良かったです!実際にその時の方々は、今ではGoogle のサービスをとてもよく使いこなしていらっしゃいます。
村山先生
補講と言っては何ですが、たしかに放課後や休み時間などに個別に対応をして、操作等分からないまま置いていかれる人が出ないよう、(当たり前ではあるのですが)我々はかなり気にかけていましたよね。教職員全体で最低限のレベルに関しては皆で(一人残らず)少しずつステップアップができるように…!
小杉さん
研修では、私が講師として喋った回もありましたが、そんな経験が全然なかったので緊張しましたねぇ。何回目かの研修で、カレンダーの説明をした時に抵抗ある人から醸し出されていたオーラ…いい思い出です。
村山先生
今でこそ、Googleサービスに関連する書籍や解説動画などたくさんありますが、2017年当時は、まだまだそのようなテキストなども多くなかったので、自分たちでゼロから資料を作成するしかなかったですもんね。緊張なんて感じない堂々としたご説明でしたよ!(写真)カレンダーの説明…。会議室の予約をカレンダーに切り替えた時ですね!誰でも新しいツールが出てくると小難しく抵抗感を感じるものですよね。今となっては校内の教職員でも Google カレンダーがないと困る、という方が大多数なのではないでしょうか…?笑
小杉さん
それこそカレンダーの機能なんて「私は手帳をつけているから、こんなもの要らない!」と言われてしまったらおしまいなので、共有することで得られるメリットを説明するのが大変でした。
村山先生
そのツールを使うことで、自分自身含めて多くの人にとってどういうメリットがあるのかまで想像ができないとなかなか「使ってみよう!」と行動にまで移せないですもんね。本校では多くの先生方に Google サービスを利用してもらえるよう、校務においては、職員会議関連資料をすべてデータで配布してペーパーレスを図ってみたり、定期的に Googleアカウントにログインしてもらえるよう(メールアドレス・パスワード忘れた などが起きないよう)、校務で先生方が入力する表計算シートなどもExcelから Google スプレッドシートに切り替えたり、「一気に」ではなく、少しずつじわじわと環境を変化させていきましたよね。
小杉さん
授業へのツール利用については「使いたい人が使う(使う頻度や量に個人差がある)」となるのは多少はしょうがないとは思いますが、「使い方を覚えるのがめんどくさいから全く使わない」などという人が生まれないよう、教員へはまずは校務において使ってもらえるよう、促す方法を検討しました。具体的には、Google Classroom の仕様を理解してもらうために、生徒と同様に教職員間の情報伝達手段にも Classroom を使用したり、会議室予約を従来は紙で行っていたものを Google カレンダーで予約できるようにしたりなどです。先ほどの話と重なりますが、今まで紙で行っていた情報共有をPC上で行う状況にして、全ての人がアカウントを利用しなくてはいけないようにしましたね。
村山先生
Googleのサービスでどのような使い方ができるのか、興味がある教員は他人から教わらなくても、自分自身で調べて授業にも応用するかと思うのですが、多くの教員は校務での利用をきっかけに、そのツールや機能について「知る」と思うので、校内で舵を切るICT部署からの発信内容・アプローチ方法、そのタイミングや頻度はかなり重要になりますよね。生徒が学園生活の中で、Google のサービスやツールの使い方などについて知る機会を考えた場合、「授業」を通して知る機会が多いと思うので、先生方にも授業でツールを活用していただけるよう、まずは校務でどのような使い方ができるのかを知ってもらうのが一番と考えています。生徒も授業で色々な使い方を知れば、部活動や委員会の時に応用できるとも思うので…。
小杉さん
まとめると我々がこの頃に意識していた教職員に向けたアプローチのポイントとしては・会議室予約や職員会議等の資料共有での利用で、全員が Google アカウントを利用せざるを得ない状況を作る・徹底的に研修や個別対応をし、苦手意識を克服(教職員全体のレベルを横並びで少しずつ上げていく) 辺りでしょうかね。
村山先生
そうですね。個別対応って大変かとも思いますが、出来る人だけどんどん使っていく雰囲気になるとツールを「使える人」「使えない人」の差がどんどんと開いて二極化してしまい、使えない人はただただ劣等感を感じたり面倒くさがったりして使わなくなってしまうと思うんですよね。実際に、本校に視察にいらっしゃる学校の方からお話を伺っていても、そのように感じることが多いです。一度そのような状況になってしまってからでは、その差を埋めるのはかなり大変なように思うので、やはりいかに丁寧に足並みを揃えて、全教職員が横並びで最低限のレベルラインを少しずつ上げていくか、というところがキーになるように感じますね。
研修でのショット(全教職員で Google Forms を使用している様子)
<生徒編>
村山先生
生徒はまだ個人端末を持っている状況ではありませんが、先に Google のサービスに慣れてもらうべく、高等部生には Google のアカウントのみ先に配布しましたね。まずは情報の授業で全員にログインをしてもらい、Google Classroom や Google Drive を積極的に利用しながら、クラウドサービスの概念や使い勝手を体験的に理解させました。
小杉さん
一番最初は「これまで使用していたWordに変わるのが Google ドキュメントだよ」といったレベルからスタートした感じですかね。
村山先生
それまで生徒はWindowsPCを用いて、ExcelやWordなどを利用していました。本校では、部活動や委員会は中高分かれずに6学年合同で行いますが、高等部生にもなると、委員会の上級学年として、行事のマニュアルや係のメンバー表など資料を作成するのですが、あの頃は生徒各自が常にUSBメモリを所持していてデータの受け渡しややり取りをしていましたよね。
小杉さん
そういえば「USBメモリが壊れたから助けてくれ」って相談されたことが当時は何回かありました…
村山先生
情報の授業でひとまず使い方についてマスターしたら、校内で率先してICTを活用した授業をしてくれそうな教科(本校の場合は主に理科です)がパイロットとなり、貸出用iPadに Google アカウントをログインする形で、Google Classroom や Google Drive、その他ツールを使ってもらいました。共同編集機能の使い方を理解したあたりから、生徒も委員会や部活動での入力は自然と Google スプレッドシートやドキュメントを使ってくれるようになりましたね。
小杉さん
共同編集機能については使えば良さを実感できますもんね!特に議事録などの作成の際にリアルタイムで確認できる点などはとても重宝しますよね。
ラウンジに設置されているPCを利用している様子
<校内の環境整備編>
小杉さん
無線LANはもともと各教室に整備してありましたが、教員が授業時に自身のノートPCを使用可能にするために整備していたものであり、生徒端末約40台が一斉に使うことを想定したものではありませんでした。そのため、多数の端末を同時に接続することができるよう校内無線LANの見直しがまず必要と考えました。当初は、同時接続数も少ないアクセスポイント(以下AP)が教室の天井裏に隠ぺい設置されている等、決して満足できる環境ではなかったので、改修工事の必要性を訴えるためにも、アクセスポイントの仕様や、各教室における同時使用台数を想定しました。例)・普通教室:1クラス生徒人数分(約50台) ・講堂:100台程度 ・体育館:50台程度だが、箇所による接続のムラをなるべく無くす・ ・ ・ などですね。APの性能としてメーカーHPに『100台まで使用可能』と書いてあっても実際には同時使用は50台程度だったりするようなので、かなり余裕を持ったスペックで設計しないと厳しいという事も管理職の方に訴えました。
村山先生
LAN配線の引き直しはせずに、それまで6〜7年ほど使用していた古いAPを一新する形をとりましたよね。大人数が集まる講堂や体育館は、予算などの兼ね合いもあり当初は端末の接続台数(APの設置数)を少なく見積もっていましたが、いざ一人一台環境が始まると、想定以上に講堂や体育館で端末を利用したいという声が多かったですよね。
小杉さん
そうですね。学年集会や成果発表会での相互評価等で生徒全員が端末を利用できるようにしたいという要望を受けて、講堂や体育館などの場所も数年かけて段階的に整備していきました。
村山先生
一つ一つのエピソードを挙げるととても長くなってしまうので、今回はこの辺で一度終わりたいと思います。次のコラムでは、保護者説明、Chromebook が納品された時の話(苦労話)、生徒配布についてお話します。今回もご覧いただきどうもありがとうございました!