連載コラム 進化を続けるICT利活用の成功校 田園調布学園の実際 -ICT教育の取り組み- Chromebook の活用 

第5回
導入後に感じた利便性 ~管理編~

本校舎の開放的な1階プラザ
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第1回はこちら
前回までのコラムで Chromebook を導入・配付するまでのお話をしてまいりましたが、今回は私、小杉が導入後にどのような点が、本校において利活用が進むポイントとなったかをご説明したいと思います。

1.マルチデバイスでのアクセスが可能


ご存知だとは思いますが、現在複数のOSが普及している中で Google Workspace(旧G-suite)はブラウザベースでの駆動により、全てのOSで使用が可能です。
教員は Windows 端末、生徒は Chromebook という環境において、コンピュータに詳しくない教員が「生徒の操作画面をイメージできる(OSが異なっても画面表示に大きな違いがない)」というのは最初に導入する際には大いに助かりました。もちろん Google Workspace の操作自体は初めてなので、使い方や機能など覚えることが多々あったとは思いますが、「生徒の端末では教員端末と違い、このアプリでは別のメニューから…」という内容では覚える項目が増えて面倒となってしまい、授業での利活用の広がりは当時ほど早くはなかったでしょう。
その点、マルチデバイスでの使用が可能な環境であることは、授業での利活用の高さに繋がったと言えると思います。

2.共有・同時編集


「Google Workspace (旧G-suite)を使える学園生活」と「導入以前の校内」との大きな違いは第3回コラムにも記載しましたが、やはり資料の共有・同時編集が可能になったことだと思います。
既存環境では以前のコラムでご紹介した通り、同時に複数人での編集ができないため、編集したくても順番待ちが起きるような環境でした。Google Workspace 導入により待ち時間なく編集に取り掛かれる点、ほぼリアルタイムで編集内容が反映されるため他ユーザーの編集内容がすぐさま確認できる点、履歴から編集途中の段階に戻せる点なども良いと思います。
これは、会議の議事録作成などに大いに役に立ちます。書記が記録をして会議後に参加者が内容確認をするというフローがなくなりますので、時短に繋がりますし、会議参加者もすぐに振り返れます。
他社でも同様のアプリはあるものの、当時無料で容量も気にせず使用できるという点で導入のハードルはかなり低く、教職員も含め全員一斉利用を開始できた事で、校内全体で利便性を感じるシーンが多かったのではないかと思います。

グループワーク活動
探究学習で Chromebook を活用している様子

3.端末に依存せずにクラウドへデータ保存


生徒が日常的に使用するとなると必然的に故障の相談件数が増えることは、事前にある程度予測できました。(女子校なので使い方からするとそれでも少ない方だと思いますが…)
授業に支障が出ないような故障相談時のフローを考えた際に、データが全てクラウドに保存されているのは非常に助かります。「故障端末の預かり→データの吸い出し→貸出端末のキッティング→データの移行→生徒へ貸出」という作業があるととても手が回りません。
その点、Chromebook の場合はローカルデータがほとんどないため、すぐに貸出端末を渡しログインするだけで授業に必要な環境が整うというのはとても大事なことではないでしょうか。

本校では、生徒の端末が故障した場合「手元に端末がないため授業を受けられない」という状況にならない事を目指しております。一般の修理窓口では日数が掛かり代替機手配が間に合わないため、修理窓口は学校のみ(主に小杉)で行っております。
修理後の端末も学校を通じて返却する対応をとるため、保険の契約内容は学校の住所で登録しています。(ご家庭の住所で登録すると住所変更の際に更新漏れなどがあっては手続きに支障が出るため)
修理フローを図解すると以下の通りです。
フロー

上記フローを導入当時から変わらず実現できているのは Chromebook ならではだったのかなと感じています。また、修理の進捗状況についても Google フォーム・Google スプレッドシートを用いて管理、村山と共有しております。
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4.管理コンソールが比較的理解しやすい


一応私にも経理業務など他にも業務などがあり、Google Workspace 及び Chromebook のことだけに従事するわけにはいきません。そんな中でも上記故障対応の他に生徒の転入出や教職員異動によるアカウント作成・削除、アプリの新規追加依頼、OSのバージョン管理などの業務が定期的に発生します。
そんな際に必須な Google Workspace の管理コンソールでの作業ですが、”比較的”分かりやすいと感じています。比較的と記載しているのは正直、素人の私には分からない専門用語や日本語、よく分からない設定項目があるからです。こればっかりはしょうがないと思いますので、その都度意味を調べるなどの対応をしております…(最近ではサードパーティー制のアプリのアクセス設定をしなくてはいけなくなりましたね。その際にAPIの制御という言葉がついていけませんでした…)
ユーザー作成や端末の設定作業工数についてはかなり少なく、専門で管理をしているわけではない私にも扱いやすい印象があります。校内でのプラットフォームの中心を1つに絞っているからこそ、その管理コンソールの操作性はとても大事だと考えます。

以上4点が、管理業務を行う中で感じた Google Workspace 及び Chromebook の利便性および利活用が進んだポイントになります。
利活用を進めるためにはハード・ソフトだけ良い物を入れてもユーザーが満足しなければダメですし、ユーザーが努力してもハード・ソフトが難しすぎてはいけません。やりたいことがシンプルに分かりやすくできる環境を構築する事が管理者に求められている事だと思います。

私自身は教鞭を握る立場ではありませんが、なるべく教員・生徒のユーザーに寄り添った目線で分かりやすい運用になるよう日々努力しております。どうしても事務からでは見えない部分がありますので村山や他の教員との日頃の雑談のような会話や、意見交換をすることで現場の状況を感じ取っています。ホウレンソウ程の事ではありませんが、こういったことも大事なことなのではないでしょうか。