連載コラム 進化を続けるICT利活用の成功校 田園調布学園の実際 -ICT教育の取り組み- Chromebook の活用 

第6回
Chromebook の配付時期・配付後生徒に伝えること

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第1回はこちら
皆さま、こんにちは。今回もコラムをご覧いただきありがとうございます。
これまでのコラムでは、主に「Chromebook 一人一台環境をスタートさせるまでの話」がメインでしたが、今回は端末を配付する時期、そして生徒に端末を配付した後について話をしていきたいと思います。

第4回のコラムでも、導入初年度の際の端末配付状況を簡単にお話しさせていただきましたが、今回はここ数年の事例を中心にお話しさせていただきます。

端末を配付するタイミングについて


皆さまの学校では、端末配付をどのタイミングで行っていらっしゃいますでしょうか。あらかじめ、入学前の段階で各家庭に発送していたり、入学式に配布・持ち帰りをしてもらったり…。これは各学校によって三者三様かと思います。

本校の場合では、生徒が入学後に端末を手渡しています。具体的な配付日としては、入学直後(新年度はじめ)に行う健康診断の日(入学式の翌々日)、または新入生の集まる新入生オリエンテーションの日(入学式の翌日)です。学校側の気持ち的には、入学と同時(入学式)に端末を手渡したいところですが、書類や教材など小学校を卒業したばかりの新入生にとっては、(いくら保護者の方が来校されているとはいえ)荷物の量が多く、かなり負担になります。そのため、あえて持ち帰りの少ない落ち着いた日を狙って、端末を配布しています。
あらかじめ、各家庭に発送することも不可能ではありませんが、皆で端末の入った箱を同時に開梱することで、ワクワクする気持ちや空気感をクラスメイトと共有する、皆で同じスタートダッシュを切ってほしいといった思いなどもあります。

端末配付の具体的な流れ


端末の配付にあたっては、部署の教員で手分けして学校に送られてきた1つ1つの箱を開梱し、生徒に配付しやすいようにあらかじめ学籍番号順の状態に並べ変えておいています。
そして、本校で使用するアカウント証(ID・パスワード)についても、端末が入った箱の側面に貼り付けて配付しています。
学籍番号を確認の上、端末受け渡している様子
※端末を学籍番号順に並び替え、アカウント証を貼り付けた様子(個人情報の関係で画像をぼかしています)
前述の通り、本校では主に健康診断の日に配付を行っていますが、その日は一日がかりで全校生徒が学年・クラスごとに校内の各所をまわりながら様々な診察を受けます(そのため、トップ画像のように、体操着に着替えてクラスが分かるようハチマキを着けています)。端末を受け取る新中等部1年生は一通り診察を受診後、最後に端末を保管しているPC教室に立ち寄り、自分自身の端末を受け取ってからホームルーム教室に戻るという流れをとっています。
学籍番号を確認の上、端末受け渡している様子
学籍番号を確認の上、端末を受け渡している様子
生徒がホームルーム教室に戻ると、ICT教育推進部の部員が待機しており、教員の説明を受けて随時端末の入った箱を開梱、内容物の確認後、端末を開いてもらいます。
ここでは、Chromebook にログインする際のアカウント名・パスワードについて説明を行い、実際にその場でログインをしてもらっています。(導入当初は、「-(ハイフン)」をどのように打てばよいかわからない、大文字はどのように入力をするのか、といった声もありましたが、近年ではGIGAのお陰もあってそのような声もだいぶ減りました。)
教師が生徒に説明している様子生徒が設定している様子

ログイン後は、特に詳細の説明などは行わず、最低限の作業として、学年全員が参加する「学年全体の Google Classroom」に入るところまで説明を行い、この日は終えます。そして、梱包されていた緩衝材や箱が不要な場合は、学校で処分を行うため、パーツごとに分けて捨てるようアナウンスを行っています。
梱包材を廃棄している様子緩衝材を並べて様子
教室横の吹き抜け(プラザ)に梱包材を廃棄している様子。自分たちできれいに緩衝材を並べていました。

生徒に向けた「端末・サービス」に関する説明


コラムをご覧になっている皆さんの学校では、端末の使い方やルールについては、どのようにアナウンスをしておられますでしょうか。これも学校によって、自治体によって、様々かと思いますが、本校の場合には端末利用に関する「ルール」は必要最低限(3つほど)にしています。本校では個人端末を導入するにあたって、すでに生徒個人端末(iPad)を導入・運用されている学校を2校ほど視察に行きましたが、そのような学校でお話を伺っても、本校に視察来校でいらっしゃる学校様と情報交換をしても、共通して言えることとして、「ルールを少なく運用している学校の方が、比較的 ICT 活用がうまく進んでいる」ということが挙げられます。(ルールについては、機会がありましたら、また別の回にて触れてみたいと思います。)

ルールを多くすればするほど(制限を強めるほど)、生徒はルールの抜け道を探し、教員と生徒のいたちごっこになってしまいます。また、ルール(制限)が多いことで、端末を使いたい時に思うように使用できず、結果的に端末活用の幅を狭めてしまうことにもつながりかねません。

さて、ここからは、生徒に端末を配付した後、どのような話をしているかについてお話ししたいと思います。学校としては、基本的に(授業などの)「学園生活の場面に応じて、使いながら慣れていってもらう」という形をとっておりますが、そうは言っても、さすがに「端末を配付してから一度も何も説明をしない」というのも無責任なので、本校では Chromebook・Google のアカウントを使用する上で必要最低限「知っておいてほしいこと」を絞り、中等部1年の技術・家庭科の授業の初回の授業(1コマ)にて取り扱っています。
(※情報モラルやリテラシーに関する話や学習は、土曜日に実施している「土曜プログラム」という講座の中でクラス単位で行っております)

以下、授業内で紹介・取り組む項目です。
  1. Chromebook とは?(コンセプト、OSの違い、2in1端末であること)
  2. 配付したアカウントについて(ID[メールアドレス]/パスワード)
  3. Chromebook で出来ること(主な Google Workspace アプリの例、Androidアプリについて)
  4. メールの利用(アドレスの仕組み・電子メールの使い方[To,Cc,Bcc]・件名)
  5. ドライブの利用(マイドライブ/共有ドライブの違い、権限について)
  6. 共同編集機能について(スプレッドシートを用いて皆で座席表を完成させよう)
  7. タイピング(自己の入力速度を把握する[5分間])
  8. 振り返り(Google Forms で文字数の入力、小学校時代の端末利用経験 [自由記述])

Chromebook や Google Workspace の紹介をするとしても、丁寧にじっくり話をしていくと、到底1時間では時間が足りません。限られた少ない時間の中で何を優先するか(何を知っておいてほしいか)を考えた上で、本校では上記のような項目に絞って生徒に話をしています。また、授業では、分からない事があれば、自分自身で調べてみる姿勢を大切にしてほしいという話もしています。(例えば、壁紙の変更手順など)

授業者として感じるここ数年の変化としては、毎年「小学校時代に端末の利用経験がどのくらいあるか」、調査を行っていますが、特にコロナショック以降は GIGA スクール構想の影響もあり、2020年頃から年々約10%ずつ使用経験のある生徒が増えています。今では学年の90%以上の生徒が、小学校時代に何かしら PC やタブレットを用いた学習活動を行ったことがあると回答しています。(それ以前は、「学校にタブレット端末が導入されたようだが、小学6年生の自分たちは触ることなく卒業した」、「ある教室にずっと置かれていて使われていなかった(いわゆるタブレットの文鎮化?)」といった回答も一定数ありました)

このあたりの話は、以前、第15回全国高等学校情報教育研究会全国大会(オンライン大会)という発表の場で動画にしたものがありますので、ご興味がある方はご覧いただけますと幸いです。

中等部1年生の変化・中等教育に求められる「情報」の在り方について
~GIGA世代の小学生を迎えて感じること〜
https://youtu.be/ZGUww7LyNt0?si=fw_poyidmZvUChml&t=140

以上のようなことから、小学校時代に端末利用の経験がある生徒が多くなってきたため、Google Workspace にどのようなアプリケーションが備わっているかなど、既に知っている生徒も多いのですが、上記の「授業内容」における、「メールの利用」に関する項目などは、今まで意識したことがない生徒も多いので、特に丁寧に話をしています。以前は、さらりと取り扱っていた部分なのですが、LINEのようなチャットツールに慣れてしまっている児童生徒たちにとって、「メール」はなかなか馴染みがないものです。これからツールを使い始める最初の段階に、ある程度しっかり意識づけをさせたい思いがあり、「メールの本文にはどのような要素を入れる必要があるか」、過去にあった(私のところに送られてきた)先輩たちのあまり宜しくない例を提示して、認識・理解してもらうようにしています。「現在は中1の技術・家庭科の初回1コマで取り扱っている」、という話をしましたが、小学校時代に「端末利用の経験がない」生徒が一定数いる時代(2018-2020)には、1コマ目の発展として、その後も2~3コマにかけてロイロノートを用いた学習や、端末を使えばどのようなことができるのかというイメージを膨らましてもらう機会として、3Dモデリングの実習などを行うこともありました。端末を手にした間もないはじめの頃に「Chromebook で何ができるのかを知る」(Chromebook を使えば無限の可能性がある・やりたいことが実現できる)ということを生徒に体験させる・ワクワクさせることはとても重要なように思っています。

この他にも「タイピング」などを行っており、コラムにて取り上げたいところなのですが、ここまででかなりの文字数になってしまいましたので、次回のコラムにて、続きをお話しできればと思います!

今回もご覧いただき、どうもありがとうございました。
また次回のコラムも宜しくお願い致します。